研究課題
福島第一原子力発電所の廃炉では、作業に伴い発生する燃料デブリや放射性廃棄物をはじめ、様々な放射性分析試料に対して、速やかに分析結果の出せる、遠隔性(非接触性)のある分析手法が求められている。本研究では、同位体シフトの小さい核種にも適用できる遠隔分光分析法として、レーザーアブレーションとドップラーフリー共鳴蛍光分光を組み合わせた、高分解能分析法の実証試験を行った。はじめに、飽和吸収分光法と2段階共鳴励起蛍光法に着目して、セメント中に含まれるカルシウム原子の吸収信号や蛍光信号を観測し、バックグランドに対する信号強度の比較から後者の優位性を確認した。さらに、蛍光観測で高い感度を得るには、波長可変レーザーの高出力化(100mW以上)が重要となることから、テーパーアンプ半導体レーザー素子を利用して、2段階共鳴励起に適した高出力半導体レーザー光源を開発した。これによって、基底状態のカルシウム原子を2段階共鳴励起し、2段目の励起状態にある原子が輻射崩壊する際に生じる732nmの共鳴蛍光スペクトルを観測した。その結果、2つのレーザー光を対向させて原子に照射した場合のスペクトル幅が100Mz程度であり、対向させない場合に観測される最小の線幅の約20分の1まで狭帯化できることや、これによって天然組成0.65%と2%の42Caと44Caの蛍光線が識別して観測できることを明らかにした。また、その強度の比較から、検量線が良好な直線性を持つことや、検出限界の同位体比が0.25%程度であること、44Caの組成比を20%程度の精度で決定できることなどを確認した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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