研究課題/領域番号 |
18H01923
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
八巻 徹也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員(定常) (10354937)
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研究分担者 |
松村 大樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (30425566)
池田 隆司 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 研究統括(定常) (60370350)
岡崎 宏之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 博士研究員(任常) (90637886)
出崎 亮 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (10370355)
田口 富嗣 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (50354832)
寺井 隆幸 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90175472)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 炭素担持Pt触媒 / 荷電粒子ビーム / 界面電子状態 / 局所構造 / 原子空孔 |
研究実績の概要 |
本研究では、荷電粒子ビーム照射により原子空孔を導入した炭素材料に単原子Pt触媒を形成し、担体効果の本質、触媒の高性能化メカニズムを解明するとともに、最高性能への設計指針を提示することを目的とする。このうち今年度は、0.5~2.0 MeV電子または数百keV ArイオンビームをHOPG等の炭素材料へ照射するとともに、物理蒸着法による単原子Pt触媒の作製を行った。同時に、Ptナノ微粒子を対象にしてX線吸収微細構造(XAFS)による構成原子の化学状態解析や、第一原理計算に基づく界面構造、電子状態の予測可能性を検討した。具体的には、以下のとおりである。 まず、物理蒸着法の一種である高周波スパッタリングが高真空化で可能な装置を製作し、炭素担持単原子Pt触媒の形成を試みた。最低のプラズマ出力の下で蒸着時間を変化させ粒成長を精密に制御したものの、ナノ微粒子を微細化したPt単原子の作製は困難であった。今後、既に作製例のある化学還元法の利用を検討していく予定である。 また、X線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルにより、酸素曝露したPtナノ微粒子におけるPtの化学状態変化を追跡したところ、イオン照射による炭素担体への欠陥導入がPt上の酸素吸着・反応界面に影響を及ぼすことを見出した。さらに、この結果を解析するため、原子空孔を導入したグラフェンとそれに担持されたPtクラスタからなる計算モデルを構築することで、フェルミ準位近傍の電子状態密度や原子空孔を含む炭素材料との形成エネルギーなどを密度汎関数理論(DFT)によって評価する基盤を整えた。今後はXANESスペクトルとDFT計算の結果を比較し、原子空孔はどのようにPt触媒を高活性化させるのかに迫りたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高真空下の高周波スパッタリングが可能な蒸着装置を製作したが、そのプラズマ出力の制御範囲の問題によりPt単原子の作製は困難であった。その意味では予定よりやや遅れが生じている状況であるが、既報で作製例のある化学還元法の利用を検討し始めるとともに、XAFSや第一原理計算による精密な解析、機構検討に向けた準備も完了していることから、次年度の終盤までには巻き返しが図れる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
物理蒸着法の代わりに化学還元法を利用することで単原子Ptの作製法を確立し、その触媒性能を示唆する電気化学特性(酸素還元の活性化支配電流)を評価することで、ビーム照射やPt周りの構造との関係を明らかにする。原子空孔の持つ担体効果を最大化できる単原子Ptに対して、酸素雰囲気下でのXAFS測定を行うことにより、欠陥導入が酸化還元反応に及ぼす影響を見極め界面相互作用の本質を解明していく。また、原子空孔を含むグラフェン上のPtクラスタをDFT計算の対象として、Pt/C間の結合エネルギーで触媒安定性を予測し、最適な界面構造を得る。
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