研究課題/領域番号 |
18H01925
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 澄彦 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30273478)
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研究分担者 |
Liang Yunfeng 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (70565522)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | セルロースナノファイバー / ナノ粒子 / 石油・天然ガス増進回収 / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
平成30年度までの研究では,n-ドデカンに対して1/10の体積の界面活性剤(第一工業製薬製NL-15)と1/6の体積の0.2 wt%CNF懸濁液及びNaCl水溶液を混合攪拌したところ,500 mM以上の塩濃度でW/Oエマルションが生成し,このW/Oエマルションは全てCNFを含有したナノ粒子(CNFナノ粒子)になっていることを確認した。また,1 wt%のPVA(日本合成化学工業製GL-15)を溶かしたNaCl水溶液に上記W/Oエマルションを攪拌しながら滴下することでW/O/Wエマルションが生成し,4000 mM以下の塩濃度でCNFナノ粒子になることを確認した。 一方,界面活性剤にSorgen30(第一工業製薬製)を用いてできるW/Oエマルションについては,Sorgen30自体がフェノール硫酸法に反応してしまい,生成したW/OエマルションがCNFを含んでいるかどうかを確認できなかった。しかし,令和元年度の研究で,このW/Oエマルションに対するSPM観察の前処理に試行錯誤を重ねることでW/Oエマルションとそれに含有していたCNFを観察することに成功した。その結果,Sorgen30を用いて生成したW/OエマルションもCNFナノ粒子になっていることが確認できた。 次に,生成したCNFナノ粒子の石油増進回収法(EOR)への適用性を確認するため,ガラスビーズを焼結して作製したコア試料に対するCNFナノ粒子の圧入試験を実施した。その結果,懸濁液状態では目詰まりが発生して圧入できなかったCNFがCNFナノ粒子にすることで圧入できるようになること,CNFナノ粒子を圧入後に静置して破壊させることでCNFが放出され,コア内部に目詰まりを発生させることが確認できた。これにより,CNFナノ粒子をEORの掃攻効率改善法に適用することで油の回収率を向上できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SPMを用いたCNFナノ粒子の観察においてその前処理技術を試行錯誤により確立したため予想以上に時間がかかった。また,不均質多孔質体モデルを用いた油回収実験も実施予定であったが,実験に耐え得る試料の作製に手間取った。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度までの研究により,CNFを含む直径1μm以下のW/OエマルションおよびW/O/Wエマルション、すなわちCNFナノ粒子を生成することに成功した。特に令和元年度の研究では,SPMを用いて生成したW/Oエマルションの内部にCNFが含有されていることを確認することができた。これにより,従来CNF含有確認に使用してきたフェノール硫酸法が適用できないような界面活性剤を用いて生成したW/Oエマルションであっても,内部にCNFを含有しているかどうかを確認できる方法が確立できた。また,ガラスビーズコア試料に対する圧入試験の結果,CNFナノ粒子をEORの掃攻効率改善法に適用することで油の回収率を向上できる可能性が示唆された。しかしながら,CNFナノ粒子のEORへの実用性を確立するには,その安定条件および破壊条件を検討し,それらを制御するDDSを構築しなければならない。 そこで,今年度は生成条件(使用する界面活性剤の種類と濃度,攪拌条件,油相の種類)を変化させてCNFナノ粒子を生成し,温度圧力条件を変えて静置したときの破壊までの時間を計測することでCNFナノ粒子の安定性を制御するためのデータを取得する。このために,導入したSPMを積極的に活用する。また,CNFナノ粒子の安定性について,界面化学に基づく理論的検討も実施する。さらに,粒径が異なるガラスビーズを焼結して作成した不均質多孔質体モデルに対し,目的の場所までCNFナノ粒子を輸送した後CNFナノ粒子を破壊させてCNFを放出させるDDSの構築を行い,EORへの適用を検討する。そのための不均質多孔質体モデルに対する油回収実験を実施し,実験中の圧力挙動と油回収量の変化,実験後の多孔質体モデルの観察から本研究で構築するDDSの有効性を確認する。
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