研究課題
地化学ツールとしての希土類元素の持つ酸化還元に敏感な地化学的特長を活かした局所分析を、浅熱水性・斑岩銅型・スカルン・オロジェニック・海底熱水・SEDEX型などの熱水が関与して形成された各種鉱床タイプの鉱石及び脈石に対して精度の高い局所分析を行うことで、改めて精密な鉱化環境の推定・解析を行い、熱水系システム全体のダイナミズムとして構築を目指した。S、H、Oといった安定同位体分析や年代測定を加味することで、鉱床の生成場の時空間的変遷を明らかにすることを試みた。本年度対象とした主な熱水性金属鉱床は、フィリピン・ルソン島およびミンダナオ島の熱水性金鉱床、インドネシア・スラメット火山近傍の熱水系、インドネシア・スマトラ島・SEDEX型鉱床、ミャンマー中部の塊状硫化物鉱床、沖縄トラフ海底熱水域、鹿児島県菱刈金鉱床、中国南部の金-アンチモン鉱床および金鉱床にて採取した試料にバルクおよびLA-ICP-MSによる局所分析を行うことで、希土類元素を含む微量元素の定量を通じた鉱化環境(特に酸化還元環境)の解明と流体包有物中の化学組成分析・均質化温度測定を行った。顕微鏡観察や安定同位体比測定、変質鉱物の同定とを組み合わせることで、鉱化前後での熱水条件の違いに基づく、微量元素の挙動の違いを確認することができた。特に、含金石英脈及び方解石脈では、鉱物組成の変化に応じて、微量元素のパターンが変わること、水素・酸素同位体比の変化と整合的であることが明らかとなり、また、海底熱水鉱床の生成に微生物の硫酸還元の寄与が硫黄同位体より顕著に表れ、そこに微量元素の結果の新たな解釈を加えることを試みた。また、熱水系からの試料としてインドネシア・ジャワ島の火山・熱水系の研究を進め、生成条件のある程度明らかなシリカ質沈殿物の希土類元素パターンを得て、そこに安定同位体の結果を加えることで、酸化還元の基準作りを行った。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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