研究課題
本年度は昨年度観測に成功したS-pi半結合に対するミクロ溶媒和の効果を検証するため、[benzene-(H2S)n-(H2O)m]+3成分クラスターカチオンの赤外分光観測に挑んだ。水の付加により当該クラスターカチオンが生成することを質量分析で確認出来たが、赤外分光に移行する時点で新型コロナウィルス感染拡大により共同研究を行っていた学生の登校が制限され、赤外スペクトルの観測には至らなかった。平行して行っていた量子化学計算は進めることが出来たので、結果検証のために赤外分光の実行を今後予定している。また、これとは別に、水分子が形成する半結合の観測にも挑戦した。(H2O-Ar)+クラスターカチオンは水にアルゴンが水素結合する形が安定であることが報告されていたが、(H2O-Kr)+では、水素結合よりも両者の非共有電子対の重なりによる半結合を形成した構造が安定となることを赤外分光、量子化学計算の双方から見いだした。この系については赤外スペクトルのより定量的な解釈のため、非調和振動計算を現在進めている。また、(CH3OH-Kr)+系においても構造決定のために赤外分光観測を現在進めている。関係する研究として、プロトン付加クラスターの非調和計算が大きく進展し、一般的な調和振動子計算では解釈できなかったクラスターの水素結合X-H振動の分裂や付随バンドの再現が可能となった。とくにプロトン付加クラスターの赤外分光と組み合わせることにより、プロトン付加サイトの水素結合X-H伸縮振動のフェルミ共鳴の様相を初めて明らかにすることに成功した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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