種々の化学反応を牽引するラジカル等の不安定化学種を対象とした電子挙動に関する研究は、現在、量子化学計算の独壇場となっている。しかしながら、計算で得られる結果の正しさには疑問が残る。確かに安定分子に対しては高精度な理論予測が可能となってきたが、化学結合の開裂で生成した高活性化学種は一般に大きな内部エネルギーをもち、高い振動励起状態にあるので、核運動と電子運動との相関が無視できず安定分子の平衡核配置近傍とは状況が大きく異なっているためである。この課題に対し、本研究では不安定化学種の分子軌道形状を実験的に可視化するという、新たな研究の道をひらいた。
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