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2018 年度 実績報告書

単結晶氷Ihの界面の構造とダイナミクスの研究

研究課題

研究課題/領域番号 18H01934
研究機関埼玉大学

研究代表者

山口 祥一  埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60250239)

研究分担者 野嶋 優妃  埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90756404)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード氷Ih / ice rule / proton disorder / 表面 / ヘテロダイン検出和周波発生 / 同位体希釈
研究実績の概要

氷は温度や圧力に依存して17の異なる相を示すが,大気圧下72 K以上ではIhが最安定相である.氷Ihの結晶構造において酸素原子の位置は一意に定まっているが,水素原子の配置はいわゆるice ruleの範囲内で無数に存在する.氷Ihバルク中の水分子の配向は長距離秩序を欠き統計的である.これは氷のproton disorderと呼ばれ,既に実験的に証明されている.
しかしながら氷Ihの表面においては,結晶欠陥がバルクよりも高密度に存在し,水分子の再配向運動を促進する.それによって表面近傍に何らかの配向秩序(proton order)が発現するのか,それともバルク同様に表面もproton disorderのままなのか,これまで未解明の問題であった.もし氷表面にproton orderが存在すれば,氷表面の極性分子に対する吸着/脱離活性や不均一触媒活性に大きな影響があり,それによって例えば極域成層圏の化学反応のモデル化が左右されうる.また,宇宙空間に漂う氷微粒子の運動の軌跡は,表面のproton orderによる双極子相互作用の遠距離性に支配されうる.そのような重要性を有する氷表面のproton orderを評価するために,我々は表面選択的な非線形分光法であるヘテロダイン検出和周波発生(HD-SFG)分光を氷Ih表面に適用し,ベーサル面のHD-SFGスペクトルの同位体希釈依存性を測定した.
OH伸縮領域のHD-SFGスペクトルは,主要なバンドはいずれの希釈率においても正符号を示した.これは,氷表面には水素原子を空気側に向けた水分子の配向秩序があることを示唆している.また,そのバンド幅は同位体希釈と共に広がり,バルクとは全く異なる表面特異的な挙動を示した.これらの結果の理論的な解析のために,静岡大学の鳥居肇先生に協力を仰ぎ,共同研究への準備を進めている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

OH伸縮領域のHD-SFGスペクトルの主要なバンドが正符号を示すという結果は,もともと全く予期していなかった.その解決のために,同位体希釈依存性を測定し,非常に興味深い表面特異的挙動を観測した.これらは,当初予想を超えた研究の進展と言える.

今後の研究の推進方策

今後は,実験ではベーサル面以外の面のHD-SFGスペクトル,ラマンスペクトル,IRスペクトルの同位体希釈依存性を測定し,理論では静岡大学の鳥居肇先生に協力いただいてそれらの実験結果の解釈を行う.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Perspective on sum frequency generation spectroscopy of ice surfaces and interfaces2019

    • 著者名/発表者名
      Shoichi Yamaguchi, Yudai Suzuki, Yuki Nojima, and Takuhiro Otosu
    • 雑誌名

      Chemical Physics

      巻: 522 ページ: 199-210

    • DOI

      10.1016/j.chemphys.2019.03.005

    • 査読あり
  • [学会発表] Vibrational Coupling at Water and Ice Surfaces2018

    • 著者名/発表者名
      Shoichi Yamaguchi
    • 学会等名
      Telluride workshop "Nonlinear Optics at Interfaces",
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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