研究実績の概要 |
電極界面では,電解質イオンや溶媒が溶液バルクとは異なる構造をしている。電極反応では,反応生成物がこれらの各物質と相互作用しながら移動し電極と電子授受をするため,非常に複雑なプロセスとなっている。高効率な電極触媒の開発に向けて,電極反応の素過程を理解する必要がある。本研究では,パルスレーザー照射をトリガーとし,電極表面の局所的な加熱により電極反応を誘起させ,X線回折および赤外分光による高速な時分割測定を実施する。従来の外部電位の制御による時分割計測では,電気二重層の過渡変化はミリ秒オーダーであり,観測対象は反応生成物の拡散過程に限られていた。本研究では,サブマイクロ秒の時間分解能で反応中の界面における3次元構造解析を行い,反応中の基板構造や反応生成物の構造変化を観測することを試みる。 2018年度は新規にパルスYAGレーザーを導入し電気化学計測システムを構築した。既報(V. Climent et al. J. Phys. Chem. B, 106, 5988 (2002))と比較するためにPt(111)単結晶を用いてパルスレーザー照射後の過渡電位変化を100 nsの時間分解能で追跡した。既報と同等な電位変化が観測され,電解質に硫酸および過塩素酸を用いたところ,電解質アニオン依存性も観測された。また,時分割赤外反射吸収分光を実施するために,パルスレーザー入射用のミラーを赤外分光器内に設置しステップスキャン測定を可能にした。表面X線回折についても2019年度に実施予定である。
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