研究課題/領域番号 |
18H01938
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石内 俊一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40338257)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イオンチャネル / ペプチド / 質量分析 / レーザー分光法 / 赤外分光方 / 冷却イオン分光法 |
研究実績の概要 |
1)カリウムイオンチャネルのGYG選択フィルターのアルカリ金属・アルカリ土類金属イオンに対する特異性の解明 GYGペプチドがナトリウムイオンとカリウムイオンに対して異なる構造の錯体を形成し、カリウムイオンに対してはイオンチャネル内と同様の構造を形成すること既に分かっているが、他のアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンに対しても、それらのカリウムイオンチャネル透過性と相関する構造の錯体を形成するのかを、冷却イオン分光を用いて明らかにした。その結果、透過性のあるイオンはカリウムイオンと同様の構造の錯体を形成するのに対して、透過性の低いイオンはナトリウムイオンの場合と同様に、その様な構造を形成しないことが分かった。また、イオン透過性の序列が、種々の構造異性体の分布の偏りに負に相関していることが分かった。この成果はChemPhysChem誌に発表し、表紙に掲載された。
2)マグネシウムイオンチャネルの選択フィルターに対する水和効果 ナトリウムやマグネシウムイオンは水和した状態でイオンチャネルに取り込まれる。本研究では最近X線結晶構造が報告されたマグネシウムイオンチャネルを取り上げた。この系では選択フィルターのアスパラギン酸残基のCOO-がMg2+の水和水と水素結合する。少数の水分子が水和している場合、水和エネルギーは小さいため、Mg2+とCOO-が直接イオン結合したイオン対状態の方が安定である。結晶構造では13個程度の水分子がMg2+に水和しているが、その程度の数の水分子で水和状態の方が安定になるのか、あるいはタンパク質の内部という環境がその安定化に寄与しているのか不明である。本研究では、Mg2+とCH3COO-のイオン対状態に水分子を1個づつ付加し、水和状態への構造転移を赤外分光で追跡した。その結果、水分子12個を付加すると赤外スペクトルが大きく変化することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、波長可変赤外レーザーの高分解能化を達成した。また、水和クラスターに関しては、GYG-K+錯体およびGYG-Na+錯体のより大きなサイズの水和クラスターの測定と構造解析を達成する予定であったが、こちらは現在進行中である。加えて、別の研究テーマとしてマグネシウムイオンチャンネルの水和効果に関する研究を新たにスタートした。
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今後の研究の推進方策 |
1)GYG-K+錯体およびGYG-Na+錯体に対する水和効果 特に量子化学計算を用いて、実測のスペクトルを解析し、これらの錯体の構造が水和によりどの様に変化するかを解明する。 2)水和クラスター生成装置の改造 複数の同位体分布をもつ金属イオンを扱う場合、特に水分子の個数が多い水和クラスターでは、同じ質量電荷比を持つ妨害イオンが存在し、その結果、目的のイオンとは異なるイオンのスペクトルが観測されることがしばしば起こることが分かってきた。これを防ぐためには、水和生成トラップにイオンを導入する前に、質量分析により特定の質量電荷比のイオンのみを選択し、そのイオンのみをクラスター生成トラップに導入する必要がある。そこで、新たに四重極質量分析器をクラスター生成トラップの前に設置し、それに伴う装置改造を行う。
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