研究実績の概要 |
本研究で開発している全電子混合基底法プログラムTOMBOにHyperfine相互作用の計算ルーチンとスピン軌道相互作用の計算ルーチンを新しくインプリメントした。このプログラムを用いて行なった、25Mg+, 43Ca+, 87Sr+, 11B, 13C, 17O, 67Zn1H, 67Zn19Fに対するHyperfine相互作用の計算結果(Journal of Physics B: Atomic, Molecular and Optical Physics)も、Ne2p, Ar2p, Ar3p, Kr2p, Kr3p, Kr3d, Kr4p, 11Na, 12Mg, 13Al, 14Si, 15P, 16S, 17Cl, HBr, BrCN, HCl, HI, I2およびSi2pに対するスピン軌道相互作用の計算結果(Annalen der Physik)も、ともに実験を大変良く再現するもので、TOMBOによるこれら相互作用の計算手法の有効性を示すことができた。
一方、X線光電子分光(XPS)直後に内殻に空いた正孔に価電子が落ちてX線を放出するX線放出分光(XES)スペクトルを求めるには、深い内殻電子空孔を持つ高い励起状態を始状態とする光放出スペクトル計算を行う必要があり、基底状態にのみ適用可能な密度汎関数理論(DFT)を用いたΔSCF 法を適用することはできない。そこで、CH4, NH3, H2O, CH3OHに対して、励起状態に適用可能な拡張準粒子理論(K. Ohno, S. Ono, and T. Isobe, J. Chem. Phys. 146, 084108 (2017))を適用し、TOMBOを用いてGW + Bethe- Salpeter方程式の方法でXESスペクトルの計算を行い、実験との良い一致を得ることに成功した(Physical Review B)。
申請者はTOMBOにdivide conquer法を導入してO(N) 化するという挑戦的な目標を掲げ、ガウス基底を平面波の重ね合わせで表すことには成功した。逆に、平面波をガウス基底のような 局在した基底の線型結合で表すことができれば従来の常識を破る画期的なことであるばかりでなく、平面波を用いたあらゆる第 一原理計算プログラムを分割統治法により O(N) 化することが可能になるので、応用面でも画期的なことである。
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