ナノイオニクス現象のひとつであるイオン交換反応は、新物質・新機能創出のための有力なアプローチである。本研究では、太陽電池や発光デバイスなどへの応用で注目を集めている有機無機ペロブスカイトのナノ粒子を対象に、構成イオンが交換し、コア-シェル型のヘテロ構造が形成されていく様子を、1分子蛍光顕微鏡を用いてその場観測し、デバイス性能に深く関わる粒子内イオン拡散のメカニズムを明らかにする。さらに、光や熱などの外部刺激によって可逆的にイオンを駆動し、発光特性を変化できる光ナノ素子を開発し、「光ナノイオニクス」という新分野の開拓に挑戦する。 本年度はこれまでの成果を原著論文にまとめるとともに、二次元ペロブスカイト材料における光誘起構造変化の機構解明を目指して研究を展開した。具体的には、既報に従い、BrおよびIを含むハロゲン混合型ペロブスカイトナノシートを合成し、溶媒中における発光挙動を単一粒子発光法によって観測した。得られた発光スペクトルからナノシートのハロゲン組成や層数を決定するとともに、これらが光照射下における構造変化に及ぼす影響を明らかにした。また、光化学反応によるハロゲン組成変換の空間制御を目指し、研究分担者と協働して単一粒子発光観測を行った。局所的に光照射を行うことで、出発物質であるBr体ペロブスカイトを部分的にBr-I混合型ペロブスカイトに変換することに成功した。その他、関連する光機能性材料についての顕微分光研究を行った。以上の研究から得られた成果の一部は関連学会や国際学術誌において報告済みである。
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