研究課題/領域番号 |
18H01953
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 良太 京都大学, 化学研究所, 助教 (80629890)
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研究分担者 |
飯田 健二 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (20726567)
川脇 徳久 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 助教 (60793792)
治田 充貴 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00711574)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 可視プラズモニクス / 局在表面プラズモン共鳴(LSPR) / 無機ナノ粒子 / 規則合金 / 金属間化合物 / 貨幣金属フリー / 錬金術 |
研究実績の概要 |
第11族元素に分類される金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)は貨幣金属と呼称され、本質的に(球状でキャリア密度制御せずに)可視域に局在表面プラズモン共鳴(LSPR)吸収を示す唯一の材料群とされてきた。無尽蔵とみなされる太陽光エネルギーの52%は可視域に分布しており、有機分子や金属錯体、無機半導体にとって可視域の光は分子内電子遷移や配位子から中心金属への電荷移動(LMCT)、バンド間遷移などを誘起する極めて重要な波長領域である。一方で、太陽光によってこれらの遷移過程を高効率化し得るプラズモン材料は、ここ160年来、実用的には第11族元素からなる単一金属や固溶合金のみであり、第11族元素以外の元素からなる規則合金の報告は皆無に等しい。 このような背景の下、我々は可視域にLSPR吸収を示す新たな金属材料としてB2(CsCl型)構造のPdIn規則合金を発見した。本研究では、B2-PdInを手掛かりに、新奇プラズモン材料群の設計指針を立案・検証し、その学理構築による第2世代材料の台頭を目的としている。昨年度に引き続き、本年度も可視LSPR発現のための電子/結晶構造的要請の定量化に積極的に取り組んだ。昨年度までに電子構造の大枠および細部に影響を及ぼす重要なファクターをそれぞれ抽出することに成功しており、本年度は議論を深化させることで、(1)規則合金の規則化度がプラズモン特性の制御因子なることや、(2)規則合金における各元素の配列様式(配位環境)が、束縛電子の振動(スクリーニング)の挙動に大きく影響を及ぼすことを明らかにした。さらには、新奇可視プラズモニック合金材料群のライブラリー構築として、B2構造とは異なる規則合金相であるC1(CaF2型)構造に着目し、C1-PtIn2ナノ粒子が可視域に明瞭な吸収ピークを有しており、その吸収がLSPRに起因することを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、(1)新奇可視プラズモニック合金材料群の創世および(2)可視LSPR発現のための電子/結晶構造的要請の定量化を実施したところ、「研究実績の概要」に記載した結果を得た。 (1)では、本研究において可視域にLSPR吸収を示すことが示されていたB2規則合金群に加え、新たに貨幣金属元素を含まないC1規則合金でも同様の概念により可視域にLSPR吸収を示すことを明らかにし、ライブラリーの拡充に成功した。C1-PtIn2はこれまでの研究成果をもとにそのLSPR特性が予測された材料であり、本研究における学理構築の妥当性と有意性が示された結果である。 (2)では、(1)でのライブラリーの拡充により、スクリーニングと結晶構造(とりわけ原子の空間充填率や各原子周りの配位環境)の関連性をより深く議論することが可能となり、昨年度同様、新奇合金群を研究対象とする有意性をさらに強調することに成功した。 このように、研究フェーズは大筋が研究計画に従って進行していることから、現在までの進捗状況として、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本年度までに得られた規則合金の結晶構造(電子構造)とプラズモン特性の相関に関する知見について、細分化と定量的をさらに深化させる。同時に、構想中の学理に基づく設計指針から予測された複数の有望規則合金について、化学的、物理的問わず様々な手法を駆使することによってそのナノ粒子やナノ構造体を合成し、そのプラズモン特性を評価する。最終年度として、本研究で得られた全ての合成実験および理論計算の結果を包括した新奇可視プラズモニック規則合金群の学理を構築し提案するとともに、本研究で創出された新奇可視プラズモニック規則合金の材料応用デモンストレーションも併せて実施する。
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