研究課題/領域番号 |
18H01955
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
塩見 大輔 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40260799)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ESR / 円偏波 / SQUID / キラリティー / キラル磁性体 |
研究実績の概要 |
これまで一般的なESRで用いられてきたマイクロ波の振動磁場は,もっぱら直線偏光(偏波)であった.これを左右どちらかの円偏波にできれば,ESRにいわば新しい横軸を与えることができる.円偏波マイクロ波を用いたESRは過去にいくつかの試みがなされているが,本研究では,汎用のSQUID磁束計に円偏波マイクロ波を導入して,定常的な縦磁化の変化量を検出することでESR信号を検出する装置系を開発した.円筒導波管の上端にガン発振器(またはDRO発振器)やポーラライザーなどからなる円偏波発生系を接続し,導波管内部の中央付近に試料(アキラルな標準試料として,ニトロニルニトロキシドラジカルの微結晶)を入れて2 K程度の低温環境で磁化を測定した. 前年度のVバンド(69 GHz帯)での実験結果から,導波管内の伝播モードが最適化されていない可能性が示唆された.本年度は,動作周波数と管径の変更を検討した.使用中のSQUID磁束計に無理なく接続できるという条件から,本年度の2号機の動作周波数をQ/Kaバンド(34 GHz前後,波長9 mm前後)とした.導波管内の偏波状態をLR(左右円偏波)基底で考え,静磁場の印加・反転に伴う磁化の減少率が偏波状態だけで決まっていると仮定して,測定で得られた磁化の値から偏波比を求めた.”L円偏波”と”R円偏波”の偏波比はそれぞれ0.47/0.53,0.45/0.55であった.これらの値は,昨年度の初号機(Vバンド)での偏波比(0.3/0.7程度)と較べても著しく劣化している.偏波比が0または∞から大きく逸脱した原因として,導波管各部での反射,管の軸対称からのずれによる高次の伝播モードの混入が考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,Q/Kaバンド(34 GHz帯)マイクロ波での(i)電磁場シミュレーション,(ii)円偏波発生系と導波管を接続した試作機(2号機)の製作,(iii)アキラルな標準試料による円偏波スペクトルの観測まで行なった.これらはほぼ当初の計画どおりのものである.しかし,導波管各部での反射,管の軸対称からのずれに由来する,高次の伝播モードの混入による反旋円偏波の混入が予想外に大きく,良好な偏波度(純度の高い円偏波)の達成には至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の実験結果から,導波管各部での反射,管の軸対称からのずれによる高次の伝播モードの混入による反旋円偏波の混入が示唆された.今後は,(i)終端抵抗器と導波管との間のよりシームレスな接続の設計と,(ii)専門の金属加工業者による導波管の内面研磨処理を検討する.
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