研究実績の概要 |
近年、二量体分子の一重項分裂(SF)に関する爆発的な研究進展が見られるものの、一重項分裂を介した量論的な二電子移動の報告は未だ皆無である。代表的なSF分子であるペンタセンとは異なり、テトラセンを用いると、このような逐次反応への展開が期待できるが、問題点として逆反応である迅速な三重項-三重項消滅 (TTA)による阻害が挙げられる。そこで本研究では、2,2’-ビフェニレンリンカーとしたテトラセン二量体を合成し、分子内高効率SFおよび生成したT1からの定量的な分子間電子移動の観測を行った。その結果、テトラセン二量体では独立した三重項励起子の高効率生成(ΦT = 175%)だけでなく、クロラニルを電子アクセプターとして一重項分裂を介した量論的な分子間電子移動反応 (ΦET = 173%)をはじめて実現した。また、ペンタセン二量体を修飾した量子ドット(QD)ではQDの選択的光励起からペンタセンへのエネルギー移動と続くSFの高効率逐次反応の観測(ΦT = 160%)にはじめて成功した。
|