研究実績の概要 |
本年度の研究によって次のような結果が得られた。 1)かご形σ共役オリゴシラン(Si14クラスター)の合成 大きな空孔をもつビシクロ[4.4.4]テトラデカシランの合成を検討した。2,2,7,7-テトラキス(トリメチルシリル)オクタシランを合成し、両末端のトリメチルシリル基をカリウムtert-ブトキシドで順次、ポタシオ化し、両末端のシリルカリウムを1,4-ジクロロテトラシランとカップリングする方法を用いた。両末端のトリメチルシリル基を一つずつポタシオ化したシリルジカリウムは転位が起こるため合成できないと報告されているが、溶媒をトルエンにし、18-クラウン-6存在下でカリウムtert-ブトキシドと反応させると、選択的にシリルジカリウムが合成できることを見出した。このシリルジカリウムの構造はX線結晶構造解析と29Si NMRスペクトルによって決定した。しかしこのシリルジカリウムを1,4-ジクロロテトラシランとカップリングしたところ、ケイ素骨格の転位が起こって、シクロデカシランの生成が見られなかった。 2)かご形σ共役オリゴシラン(Si8クラスター)の合成 4個のフェニル基が置換したビシクロ[2.2.2]オクタシランの合成を行った。2,2,5,5-テトラキス(トリメチルシリル)ヘキサシランを用いて、上と同様に両末端のトリメチルシリル基をカリウムtert-ブトキシドで順次、ポタシオ化し、両末端のシリルカリウムを1,2-ジクロロジシランとカップリングした。この方法によって、一つの架橋鎖に4個のフェニル基が置換したビシクロ[2.2.2]オクタシランを合成した。この化合物の構造をX線結晶構造解析で決定し、σ骨格の共役を紫外吸収スペクトルと理論計算によって解析した。
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