研究実績の概要 |
2018年度は、meso位の窒素上に置換基をもつ2種類のアザポルフィリン誘導体(10,15,20-トリアリール-15-アザ-5-オキサポルフィリンおよび5,15-ジアルキル-5,15-ジアザポルフィリン)およびβ位の炭素上に置換基をもつジアザポルフィリン誘導体を題材として、その合成および物性の解明に取り組んだ。前者の化合物については、代表者らが独自に開発した鋳型環化反応を用いて合成し、酸化剤・還元剤を用いて、18π、19π、20π酸化状態をもつ誘導体を得ることに成功した。いずれの化合物群においても、酸化・還元反応は可逆的に進行し、光物性が酸化状態に連動して大きく変化することを明らかにした。また、一部の誘導体についてはX線結晶構造解析に成功し、ポルフィリン環が高い平面性をもつことを確認した。これは、ポルフィリン誘導体の芳香族性を議論するうえで極めて有用な特徴であり、核磁気共鳴法と理論計算により、18πと20π系化合物が、それぞれ芳香族性と反芳香族性をもつことを明らかにした。さらに、19π酸化状態をとる化合物は近赤外光に対して高い応答性を示し、光照射により酸化還元反応を起こすことを見出している。一方、β位にヘテロ元素官能基をもつ数種類のジアザポルフィリン誘導体を合成し、一部の化合物については可視光照射による一重項酸素発生能を調べた。また、四つのβ位に親水性のアミノ基をもつジアザポルフィリンのパラジウム錯体と銅錯体を合成し、水中における一重項酸素発生効率を評価した。その結果、パラジウム錯体が可視光および近赤外光照射により高い効率で一重項酸素を発生することを確認した。この結果を基に、がん細胞に対する光細胞毒性の評価を行い、親水性パラジウム錯体が高い活性を示すことを明らかにした。得られた成果については、学会発表を行ったほか4報の論文として報告した。
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