研究課題/領域番号 |
18H01962
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
茅原 栄一 京都大学, 化学研究所, 助教 (10610553)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シクロパラフェニレン / 環状π共役分子 / 結合活性化 / 遷移金属錯体 / 炭素ー炭素結合活性化 / トポロジー |
研究実績の概要 |
シクロパラフェニレン (CPP) をはじめとした環状π共役分子は、歪んだ環状構造に由来する特徴的な電子物性、構造特性、化学的な反応性といった基礎科学的な観点や、次世代有機半導体材料としての可能性から大きな注目を集めている。研究代表者は、最近、CPPの実用的な合成法を開発するとともに、CPPを試薬として市販化することに成功している。本研究では、CPPの新しい利用法を提案する。入手容易なCPPを出発原料として用い、遷移金属錯体によるCPPのベンゼン環同士をつなぐ炭素-炭素結合の活性化を鍵として、環状π共役オリゴマー、高分子を合成する方法の開発を目指す。この検討を通して、CPPをはじめ環状π共役分子の発展的活用に対して、一つの道筋をつけるとともに、特徴的なπ電子系とトポロジーを併せ持つ新しい高分子材料を創製するための新しい方法論の確立を行う。 本年度は、本研究の鍵となる、遷移金属錯体によるCPPの炭素-炭素結合の活性化について検討を行った。その結果、環サイズの小さな[5]、[6]CPPと0価のテトラキストリフェニルホスフィン白金錯体との反応において、CPPの炭素ー炭素結合活性化が進行することを明らかにした。さらに、反応したCPPにおいては、いずれも2つの炭素-炭素結合が活性化されて、環状二核錯体が得られた。また、得られた環状錯体と一酸化炭素の挿入反応と続く白金の脱離により、環状ケトンが得られることを明らかにした。本法を用いることで、様々な環状オリゴマー、高分子の合成が行えると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の鍵となる、遷移金属錯体によるCPPの炭素-炭素結合活性化に成功した。さらに、その成果については、研究発表、論文化出来たことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
CPPの炭素ー炭素結合活性化反応によって得られた環状白金二核錯体を用いて、アルキンやイソシアニドのような不飽和化合物との反応について検討を行う。特に、不飽和化合物の挿入、環拡大により、徐々に錯体上の環歪みが緩和されることが予想され、その緩和の程度によって挿入反応に対する反応性が変化すると考えられる。よって、環歪みとその反応性の関係性を明らかにし、環の大きさを制御する(挿入されるアルキンの数を制御する)可能性についても検討を行う。
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