研究課題/領域番号 |
18H01963
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水畑 吉行 京都大学, 化学研究所, 准教授 (30437264)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フェニルアニオン / 有機元素化学 / 高周期14族元素 / 芳香族化合物 / 共役系化合物 |
研究実績の概要 |
本研究では、フェニルアニオンの高周期14族元素類縁体を、含高周期14族元素新規π共役化合物創出に繋がるビルディングブロックと捉え、その合成手法の確立とその基本的性質の解明を目指している。これらの化合物は、かさ高い置換基を持たなくとも電荷反発により自己多量化を防ぐことが期待され、また炭素類縁体とは異なる反応性を示すと考えている。 これまでの研究により、ゲルマニウムおよびスズ核置換フェニルアニオンの合成・単離に成功し、その性質を明らかにしてきた。その結果、これらが母体フェニルアニオンと同様芳香族性を有している一方、核置換した高周期14族元素が二価化学種としての性質も有していることを明らかにしている。 平成30年度は、共役系の拡張したアントリルアニオンへのゲルマニウム元素導入の効果を検証するため、9-ゲルマアントラセニルアニオンの合成を検討した。ベンゼン縮環によって、本骨格のゲルマニウムの持つ二価化学種性はゲルマニウム核置換フェニルアニオンに比べ著しく増大すると期待される。実際に合成を試みたところ、予想通り高い二価化学種性を反映して、生成したアニオン同士が三量化するという特異な反応性が見られた。環構造に応じてその反応性を大きく変更できることを示しており、今後の分子設計の際において重要な知見が得られた。 またケイ素核置換フェニルアニオンの合成にも取り組み、ゲルマニウムおよびスズ類縁体と同様、ケイ素上にかさ高いアリール基を有する中性シラベンゼンの還元的脱アリール化による発生を試みた。しかしケイ素の系ではアリール基の脱離反応が進行せず、二電子還元および分子内プロトン移動を経たジアニオンが得られることが明らかとなった。比較的類似した性質を示すことが多いケイ素とゲルマニウム類縁体において、反応性が大きく異なることは興味深く、また反応機構に関する重要な知見を与えるものとして現在詳細を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共役系の拡大によって、重いアリールアニオンにおける高周期14族元素中心のもつ電子状態を大きく変えることができることが明らかとなった。それによって分子設計の幅が広がり、より広範な電子状態を持つ含高周期14族元素π共役系化合物合成につながると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新規共役系にゲルマニウムおよびスズを組み込んだ重いアリールアニオン類縁体の合成に取り組む。また継続してケイ素類縁体の合成を検討し、種々の還元剤との反応を試みる。またこれまでに合成した重いアリールアニオンに対して、種々の求電子剤との反応を試み、新たな含高周期14族元素π共役系化合物を構築する。
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