研究課題
本研究では、フェニルアニオンの高周期14族元素類縁体を、含高周期14族元素新規π共役化合物創出に繋がるビルディングブロックと捉え、その合成手法の確立とその基本的性質の解明を目指している。これらの化合物は、かさ高い置換基を持たなくとも電荷反発により自己多量化を防ぐことが期待され、また炭素類縁体とは異なる反応性を示すと考えている。前年度までの研究により、ゲルマニウムおよびスズ核置換フェニルアニオンの合成・単離に成功し、その性質を明らかにしてきた。その結果、これらが母体フェニルアニオンと同様芳香族性を有している一方、核置換した高周期14族元素が二価化学種としての性質も有していることを明らかにしている。2019年度は、ナフタレン骨格に展開し、ゲルマニウム上にかさ高いアリール基を有する2-ゲルマナフタレンと還元剤との反応により、2-ゲルマナフタレニルアニオンが熱的に安定な化合物として合成・単離が可能であることを明らかにした。この結果をふまえ、かさ高いアリール基を用いない2-ゲルマナフタレニルアニオンの合成検討も行っている。また、前年度から継続してケイ素核置換フェニルアニオンの合成に取り組んでいる。ケイ素の系では、原料であるシラベンゼンに対して、ゲルマニウムおよびスズ類縁体と同じかさ高いアリール基を用いるとアリール基の脱離反応が進行せず二電子還元および分子内プロトン移動を経たジアニオンが得られることが明らかとなった。そこで現在、分子内プロトン移動を抑制する置換基を用いて検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
合成・単離に成功したゲルマニウム核置換ナフチルアニオンは、ベンゼン縮環によって、フェニルアニオン類縁体よりもゲルマニウムの二価化学種性が増大していると考えられる。この性質の違いを明確にすることによって、より広範な電子状態を持つ含高周期14族元素π共役系化合物の設計・合成につながると考えられる。
合成・単離に成功している高周期14族元素核置換アリールアニオンの反応性の検討をさらに推し進め、特徴的な電子状態を有する共役系化合物の設計・合成を行う。ケイ素類縁体に関しても検討を継続し、核置換元素の違いによる性質の違いを明確にし、分子設計における自由度を増したいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 9件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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