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2020 年度 実績報告書

電荷移動錯体の光励起を鍵とする新機軸キラル光化学

研究課題

研究課題/領域番号 18H01964
研究機関大阪大学

研究代表者

森 直  大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70311769)

研究分担者 西嶋 政樹  東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (70448017)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード光不斉反応 / 電荷移動錯体 / エキシプレックス / エントロピー制御 / キラリティー / 可視光励起 / キラルルイス酸 / 励起三重項
研究実績の概要

電子供与体と受容体は、基底状態において弱い相互作用を示し、電荷移動錯体を生成することが知られている。この錯体は、主として可視光領域に電荷移動吸収帯を生じ、その波長選択的な光励起が可能である。励起された錯体は、励起電荷移動錯体となるが、これまでの研究において、この励起種が通常のエキシプレックスとは異なる励起種であり、特異な光反応性を示すことが明らかとなっている。本年度は、励起三重項状態の関与するキラル光反応、具体的にはナフトキノンへのアルケンの付加反応において、電荷移動励起を検討するとともにキラルルイス酸の配位効果を検討した。天然物などに多く存在する複雑な多環式化合物を、高い立体選択性で生成可能となれば合成反応としても有意義であり、その立体選択性の支配因子を解明することが重要である。具体的な成果としては、予測した通常の環化生成物に加え、交差型の極めて特異な多環式化合物が比較的高い収率で生成していることをX線結晶構造などの解析により明らかとした。また、生成物の絶対配置を円二色スペクトルなどの検討により決定することができた。主たる成果はAngew. Chem. Int. Ed.誌を含む6報の論文等に公表した。また、今年度はコロナ禍での実験の制限などがあったことから、書籍や総説の執筆に比重を置くことで研究全般の俯瞰的な意義づけも行うことができた。以上の状況から、最終年度度における研究に向けて大いに期待の持てる状況であると考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究「荷移動錯体の光励起を鍵とする新機軸キラル光化学」の構築においては、弱い相互作用を活用するこれまでにない光反応立体選択性制御の方法論を実証することが目的である。本年度は、通常の環化生成物に加え、交差型の極めて特異な多環式化合物が比較的高い収率で生成していることをX線結晶構造などの解析により明らかとした。また、これまで困難であった生成物の絶対配置を円二色スペクトルなどの検討により決定することができた。本成果の初期的成果はその他関連成果も合わせAngew. Chem. Int. Ed.誌を含む計6報の論文として成果発表したほか、コロナ禍における実験的制約の状況下、今までの一連の成果を書籍や総説の形でまとめることもできた。このような状況から、実験的な進展は当初計画通りであるものの、プロジェクト全体の進展を鑑み、(1)の当初計画以上に進展している。と判断した。

今後の研究の推進方策

電子供与体と受容体は、基底状態において弱い相互作用を有するため、電荷移動錯体を生成することが知られている。この錯体は、主として可視光領域に電荷移動吸収帯を生じ、その波長選択的な光励起が可能である。励起された錯体は、励起電荷移動錯体となるが、これまでの研究において、この励起種が通常のエキシプレックスとは異なる励起種であり、特異な光反応性を示すことを明らかとしている。本年度は、励起三重項状態の関与するキラル光反応、具体的にはナフトキノンへのアルケンの付加反応において、電荷移動励起を検討するとともに種々のキラルルイス酸の配位効果の検討をすすめる。複雑な多環式化合物を、高い立体選択性で生成可能となれば合成反応としても有意義であるが、その立体選択性の支配因子についてはまだ解明に至っていない。反応の精密制御のため、量子化学計算なども駆使しながら、キラル化合物の基底状態、励起状態の光化学的物性、特に円二色性と円偏光発光との関係を体系的に検討する。また、研究の最終年度として、電荷移動相互作用以外の超分子相互作用、いわゆる弱い相互作用が光反応の制御に一般的に活用可能かどうかを検証し、新たな光反応系として実証することが最終的な目的である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] ミュンヘン工科大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      ミュンヘン工科大学
  • [国際共同研究] 四川大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      四川大学
  • [雑誌論文] Enantiodifferentiating Photodimerization of a 2,6‐Disubstituted Anthracene Assisted by Supramolecular Double‐Helix Formation with Chiral Amines2020

    • 著者名/発表者名
      Urushima Akio、Taura Daisuke、Tanaka Makoto、Horimoto Naomichi、Tanabe Junki、Ousaka Naoki、Mori Tadashi、Yashima Eiji
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 59 ページ: 7478~7486

    • DOI

      10.1002/anie.201916103

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Combined Experimental and Theoretical Studies on Planar Chirality of Partially Overlapped C2-Symmetric [3.3](3,9)Dicarbazolophanes2020

    • 著者名/発表者名
      Tani Keita、Imafuku Risa、Miyanaga Kanae、Masaki Miyuki Eiraku、Kato Haruka、Hori Kazushige、Kubono Koji、Taneda Masatsugu、Harada Takunori、Goto Kenta、Tani Fumito、Mori Tadashi
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry A

      巻: 124 ページ: 2057~2063

    • DOI

      10.1021/acs.jpca.0c00286

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Aggregation-induced photocatalytic activity and efficient photocatalytic hydrogen evolution of amphiphilic rhodamines in water2020

    • 著者名/発表者名
      Shigemitsu Hajime、Tani Youhei、Tamemoto Tomoe、Mori Tadashi、Li Xinxi、Osakada Yasuko、Fujitsuka Mamoru、Kida Toshiyuki
    • 雑誌名

      Chemical Science

      巻: 11 ページ: 11843~11848

    • DOI

      10.1039/d0sc04285d

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Enhancing Photostability of a Coumarin Dye by Self‐inclusion into a Cyclodextrin Cavity in Aqueous Solution and Living Cells2020

    • 著者名/発表者名
      Shigemitsu Hajime、Matsuda Keigo、Mori Tadashi、Nakatsuji Hirotaka、Matsusaki Michiya、Kida Toshiyuki
    • 雑誌名

      Asian Journal of Organic Chemistry

      巻: 9 ページ: 2112~2115

    • DOI

      10.1002/ajoc.202000365

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A Thioxanthone Sensitizer with a Chiral Phosphoric Acid Binding Site: Properties and Applications in Visible Light‐Mediated Cycloadditions2020

    • 著者名/発表者名
      Pecho Franziska、Zou You‐Quan、Gram?ller Johannes、Mori Tadashi、Huber Stefan M.、Bauer Andreas、Gschwind Ruth M.、Bach Thorsten
    • 雑誌名

      Chemistry - A European Journal

      巻: 26 ページ: 5190~5194

    • DOI

      10.1002/chem.202000720

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Figure‐eight Octaphyrin Bis‐Ge(IV) Complexes: Synthesis, Structures, Aromaticity, and Chiroptical Properties2020

    • 著者名/発表者名
      Izawa Mondo、Suito Taisuke、Ishida Shin‐ichiro、Shimizu Daiki、Tanaka Takayuki、Mori Tadashi、Osuka Atsuhiro
    • 雑誌名

      Chemistry - An Asian Journal

      巻: 15 ページ: 1440~1448

    • DOI

      10.1002/asia.202000159

    • 査読あり
  • [学会発表] キラルルイス酸を用いた1,4-ナフトキノンとアルケンの分子内光環化付加反応2020

    • 著者名/発表者名
      清水菜生・森 直
    • 学会等名
      2020年光化学討論会
  • [学会発表] 多環式芳香族化合物を修飾したシクロデキストリン誘導体の円偏光発光特性2020

    • 著者名/発表者名
      山田慎太郎・重光孟・川上晃聖・森 直・木田敏之
    • 学会等名
      2020年光化学討論会
  • [学会発表] シクロデキストリン環上でのピレンエキシマー形成による円偏光発光特性の発現2020

    • 著者名/発表者名
      川上晃聖・重光孟・梶原陸生・森 直・木田敏之
    • 学会等名
      2020年光化学討論会
  • [学会発表] ヒト血清アルブミンをキラル反応場に用いたアントラセン誘導体の触媒的超分子不斉光反応系の構築2020

    • 著者名/発表者名
      西嶋政樹・河合美咲・豊岡壮太・藤城祐也・森 直・荒木保幸・井上佳久・和田健彦
    • 学会等名
      第14回バイオ関連化学シンポジウム2020
  • [図書] Circularly Polarized Luminescence of Isolated Small Organic Molecules2020

    • 著者名/発表者名
      Mori, Tadashi
    • 総ページ数
      342
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-981-15-2309-0

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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