研究課題
本研究では含ヨウ素有機ボロン錯体2を中心に用いて,1)メタルフリー有機常温りん光結晶の創製と2)理論化学的解明を行った.そしてこれを基に3)メタルフリー有機常温りん光現象発現の新原理の確立,そして4)メタルフリー有機常温りん光物質の普遍的な分子設計・結晶制御指針の考察を行った.具体的には、①合成、②溶液中および結晶中の分光測定(吸収)、③溶液中および結晶中の分光測定(発光)、④X線結晶構造解析、⑤理論化学計算、⑥新原理の確立、⑦指針の提案の7項目における研究を行った。特に、①については、特異な積層構造を構築しうるヨウ素を置換基として有するボロン錯体2Bが本年度に合成が完了しなかったが、あとは最終段階のみであるので大きな問題は無い。特筆されるのは、ボロン錯体2および関連するシクロファン誘導体の②、③の項目で、当初の計画にはなかったダイアモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧下の実験を行い、圧力依存性の吸収や発光などが観測されるなど、興味深い結果を得たことである。また、年度末にはこれも当初の予定には無かったが、高エネルギー加速器研究機構での時間分解X線実験で、光励起状態の結晶構造解析を行った。結果は現在解析中である。ヨウ素原子の項間交差を結晶中で積極的に活用する本研究はまだ基礎研究段階ではあるが,結晶工学と光化学の融合に基づいた「メタルフリー有機常温りん光」という新しい学理の確立に貢献できる.将来的には、その成果により,様々なメタルフリー有機常温りん光物質を社会に提供できることが期待される.さらには,有機EL用やバイオイメージング用の革新的な発光物質の提供による,産業・医学への応用・展開という社会実装が期待できる.
2: おおむね順調に進展している
上述の様に、①合成のごく一部において未完了の部分があったが、その他の②~⑦についてはほぼ順調に進行している。さらに、当初の計画にはなかったダイアモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧下の実験を遂行して興味深い結果を得ており、また、これも当初の計画にはなかった高エネルギー加速器研究機構での時間分解X線実験で、光励起状態の結晶構造解析を試みるなど、挑戦的な研究も開始できた。従って、(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
本研究は、①合成、②溶液中および結晶中の分光測定(吸収)、③溶液中および結晶中の分光測定(発光)、④X線結晶構造解析、⑤理論化学計算、⑥新原理の確立、⑦指針の提案の7段階からなる。特に、①については、特異な積層構造を構築しうるヨウ素を置換基として有するボロン錯体2Bが本年度に合成が完了しなかったので、来年に完了させる。また、当初から予定していた錯体3A-C、そして今年度の結果を受け、シクロファン構造を有する新たなボロン錯体を来年度に合成する.②③の項目については、当初の計画にはなかったダイアモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧下の実験も追加する。また、高エネルギー加速器研究機構での時間分解X線実験で得た、光励起状態の結晶構造解析を引き続き行う。④については、DACに対応させて高圧下の結晶構造解析も行う。⑤から⑦の項目については大きな変更や問題は無い。
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