研究実績の概要 |
本研究課題では、新たなπ電子系イオンを創製し、その集合化および電子機能材料・デバイスへの展開、さらに物性や集合体形態に関わる学理の解明に挑戦した。今年度は電荷を有するπ電子系の合成および集合化を中心に検討した。とくに、拡張π電子系であるポルフィリンのAu(III)錯体が+1価のπ電子系カチオンとしてふるまうことに着目し、多様な対アニオンの導入やポルフィリンの周辺修飾によって構成ユニットの規則配列に基づく次元制御型集合体(超分子ゲル・液晶)の形成を新たに見出した(iScience 2019, Chem. Asian J. 2019)。また、π電子系に導入した酸ユニットの脱プロトン化によるπ電子系アニオンの修飾を実現し、π電子系の拡張とアニオンの安定化(Chem. Eur. J. 2019)や液晶中間相の発現(Chem. Eur. J. 2018)、新規π電子系骨格への展開(Chem. Commun. 2018)を報告した。また、アニオン会合能を有するπ電子系のアニオン会合挙動および次元制御型集合体への展開を行い、ヘテロ芳香環導入による動的挙動の検証(Chem. Asian J. 2019)や環状構造形成による高いアニオン会合能の発現(Org. Lett. 2018)、アニオン会合を利用した有機触媒への展開(Org. Lett. 2018)を報告した。一方、π電子系へのカチオンおよびアニオン部位の導入による双性イオンの形成と自己会合挙動の形成も実現した(Chem. Eur. J. 2018)。さらに、自己集合体(ナノキューブ)におけるゲスト種であるπ電子系アニオンの効果(Nature Commun. 2018, 2019)に関する内容を共同研究で実施した。
|