研究実績の概要 |
本研究課題では、新たなπ電子系イオンを創製し、その集合化および電子機能材料・デバイスへの展開、さらに物性や集合体形態に関わる学理の解明に挑戦した。本年度は、構造・電子的に適した電荷種(イオン)を設計・合成し、その間にはたらく相互作用を制御することによって、電荷的に中性なユニットからなる集合体を凌駕した物性を発現する電子機能マテリアルへの展開が可能になる(Mol. Syst. Des. Eng. 2020, Chem 2020)。荷電π電子系の前駆体であるアニオン応答性π電子系に関し、分子論理ゲートへの展開の可能性(Org. Biomol. Chem. 2020)や窒素置換基の導入(Molecules 2021)、らせん型アニオン会合体の形成(Eur. J. Org. Chem. 2020)、架橋部位(1,3-ジケトン)への遷移金属の導入(Inorg. Chem. 2020, Molecules 2021)を実現した。また、、脱プロトン化によって生じるアニオン部位を水素結合によって安定化したπ電子系アニオンを基盤とし、イオンペアメタセシスによる多様なイオンペア集合体の構築を実現し(Org. Lett. 2021)、一方、1,3-ジケトン骨格の改変によって湾曲π電子系を新たに合成し、その水素結合環状集合体がC60を会合した集合体における光誘起電子移動を観測した(J. Am. Chem. Soc. 2020)。さらに、ピロールからなるπ電子系のスメクチック液晶における、電場応答性(強誘電性)の発現を明らかにした(Org. Lett. 2021)。さらに、2Dパターニングにおけるπ電子系分子の反応過程の実空間イメージング(J. Am. Chem. Soc. 2020)、アニオン応答性π電子系のアニオンセンシングに関する静水圧による制御(Chem. Sci. 2021)、B-N結合を有するπ電子系カチオンからなるイオンペア集合化(Angew. Chem. Int. Ed. 2021)に関する内容を共同研究で実施した。
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