研究課題/領域番号 |
18H01969
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
蒲池 高志 福岡工業大学, 工学部, 教授 (40403951)
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研究分担者 |
山本 英治 九州大学, 理学研究院, 助教 (70782944)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 配座解析 / 有機分子触媒 / 不斉合成 |
研究実績の概要 |
2021年度では、シンコナアルカロイド由来のキラル四級アンモニウム塩を相間移動触媒として用いたアズラクトン類の加アルコール分解による動的速度論分割における基質検 討およびConFinderとDFT計算を利用した反応機構解析を行った。また、チオウレア-アミン二官能性触媒を用いた窒素求核剤によるアズラクトン類の開環反応を検討した。
アズラクトンの加アルコール分解における動的速度論分割については、α位に嵩高い三級の置換基を持つアズラクトン類に対して極めて高い立体選択で反応が進行し、対応する非天然アミノ酸エステルを良好な収率で得た(61-87%収率、88-97% ee, 5例)。また、このα位の置換基が二級、一級と小さくなるにつれ立体選択性が大きく低下することを確認している。また、この反応系は、幅広い一級アルコールを求核剤として利用可能であり、t-Leucine由来のアズラクトンに対してほとんどのケースで90% ee以上の高い立体選択性で目的生成物を与えた。反応機構解析に関しては、Hammet則に基づく解析に加えて、Confinderを用いた配座探索やDFT計算による反応機構解析を行った。その結果、本反応では、求核剤となるアルコール分子に加えて、さらにもう一分子のプロトン性水酸基が反応の立体選択性発現にとって重要であることを明らかにすることができた。これらの結果を触媒専門誌として評価の高いACS Catal.誌 (IF: 13.08)で発表した(ACS Catal. 2021, 11, 14067-14075)。また、この論文は、本誌のsupplementary coverとして採用されるなど他の同じ雑誌に掲載された論文と比べても高く評価された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では、Hammet則に基づく解析や量子化学計算手法を用いた反応機構解析を実施し、詳細な反応機構を明らかにすることができた。また、これらの結果をまとめて評価の高い国際誌で発表し、高い評価を得た (ACS Catal. 2021)。さらに、アズラクトン類の不斉加アミン分解について検討し、中程度の収率、立体選択性で目的生成物を得ることのできる触媒系を見出した。また、この反応における光学活性ヒドラジド類が効率的な優先富化現象を生じ、低い光学純度の生成物から容易に極めて高い光学純度の生成物を得ることができる興味深い現象を見出した。以上のことを踏まえ研究全体として、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、関連するエノールエステルの加水分解的不斉プロトン化およびエステル不斉加水分解反応についてConFinderを持ちいた詳細な反応機構解析を行いながらアズラクトン類の不斉加アミン分解に関する研究を進める予定である。本反応は、優先富化現象を利用し、ラセミ体を優先的に析出させることで容易に光学純度を上げることができるが、排除したラセミ体の量だけ収率が低下することになるため、合成的に有用な手法とするには光学的に純粋な化合物の収率が70%を超える程度の反応効率を目標に触媒検討、条件検討を行った後、基質適用範囲を検討する予定である。また、効率的な優先富化現象自体が稀な現象であるため、単結晶X線構造解析などを含めた詳細なメカニズムの調査も実施する。
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