2022年度は、シンコナアルカロイド由来のキラル四級アンモニウム塩を相間移動触媒として用いたアズラクトン類の加アルコール分解による動的速度論分割における基質検討およびConFinderとDFT計算を利用した反応機構解析を引き続き行った。この動的速度論分割型のエステル不斉加水分解は多くの素過程からなる.エステルの分子内環化によるアズラクトン生成から始まり、アズラクトンのラセミ化,HFIPによるアズラクトンの開環によるエステルのラセミ化が進行する.この反応機構は当初の実験から推測されていたが,DFT計算によりエネルギー的に有利なエネルギーダイアグラムを示すことができた。また、IGMplot分析を行い、立体選択性を制御する遷移状態において重要となる相互作用、オキシアニオンホールを形成する水素原子と基質アミドとの水素結合や基質-触媒間でのπ-スタッキング、ヘテロ原子-水素間での水素結合などを具体的に挙げることができた。これらの知見は今後の触媒開発の指針の一つとなりうる。この成果は、国際の海外学術誌(J. Org. Chem.誌)に受理され、発表済みである。
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