研究課題/領域番号 |
18H01970
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷野 圭持 北海道大学, 理学研究院, 教授 (40217146)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 合成化学 / 四級炭素 / 転位反応 / 天然物合成 |
研究実績の概要 |
有機合成化学において、第四級不斉炭素の構築は立体障害のために困難であり、これを克服する新手法の開発が求められている。本研究の目的は、申請者が独自に設計した「エポキシニトリルの形式的転位反応」および「転位反応によるgem-ジビニル化合物の高効率合成」を第四級不斉炭素構築の強力なツールとして確立することにある。さらに、これらが真に有用な有機合成手法であることを、縮環炭素骨格を有する天然物の全合成において実証する。標的化合物としては、医薬品や農薬のリードとして期待される高次構造天然物に加え、社会的な意義をもつ天然物を選び、その過程で得られる各種誘導体を生物活性試験に付して構造活性相関の知見を得る。 本年度は、社会的な意義を持つ以下の天然物を標的化合物として設定し、その効率的全合成を目指した。ベルカリンJは、毒キノコのカエンタケから単離された毒成分である。カエンタケ(火炎茸)は致命的な食中毒の原因となるばかりか、その汁に触れるだけで重度の皮膚炎を引き起こすことから、身近な社会問題となっている。ベルカリンJの大環状ラクトンを加水分解して得られるベルカロールは、カビ毒素の成分として知られ、生化学や食品化学の分野で特に関心を集めてきた。ベルカロールの全合成は、日本の研究者によって既に達成されているが、約40工程を要するため、効率的な合成法の開発が望まれる。本研究では、エポキシニトリルの形式的転位反応を鍵とするベルカロールの短工程全合成を実施し、さらにベルカリンJの合成へと展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の一つである、キノコ毒の成分(ベルカロール)の効率的全合成に成功した。独自に開発した「エポキシニトリルの形式的転位反応」を採用することで、短工程での合成が達成されたことから、他の天然物合成にも応用し得る効率的な合成手法となることが実証された。
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今後の研究の推進方策 |
微生物から発見された天然物ヒスピドスペルミジンを標的化合物として設定し、「転位反応によるgem-ジビニル化合物の高効率合成」を鍵とする効率的全合成を目指す。ヒスピドスペルミジンは、ホスホリパーゼC を特異的に阻害して細胞増殖を抑制する生物活性を示す。その分子構造は、5員環と2つの6員環が組み合わされたカゴ型骨格にアミン側鎖が連結された複雑なものである。これまでに3例の全合成が報告されているが、本研究ではgem-ジビニル化合物にアルケン側鎖を導入し、閉環メタセシス反応による非対称化で第四級不斉中心を構築する斬新な合成アプローチを検討する。
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