今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、これまでの研究成果をより拡張する目的で、1,3-プロパンジオールをアルケンとアルデヒド等価体と見なす新しい分子骨格形成反応へ展開したい。本研究では1,3-プロパンジオールの形式的なGrob型転位反応に挑戦する手法であり、1,3-ジオール骨格の炭素-炭素切断反応として興味深い。今年度は、Sc(OTf)3だけでなく、様々な親酸素性触媒を使った新たな炭素-炭素切断・骨格形成を開拓していきたい。とりわけ、ニッケル触媒作用によるGrob型転位反応が可能になれば、様々な1,3-ジオール骨格を母核とした炭素骨格再構築化が期待できる。例えば、4,6-シクロヘプタジエニル-1,3-ジオールをニッケル触媒存在下、Grob転位反応と酸化的環化反応の連続的反応により、クレゾール骨格が一挙に構築できると予想される。また、オキサニッケラサイクル中間体とトランスメタル化を起こす有機金属化合物を添加すると、様々な置換ベンゼンが得られる。更に、4-シクロヘキセン-1,3-ジオールを原料に用いた高効率プロスタグランジン(PG)の中間体合成に挑戦する。従来、PG合成には複雑な多段階反応が必要であったが、本研究ではオキサニッケラサイクル中間体に対してアルキン挿入と有機亜鉛の高立体選択的な付加反応を多段階的に利用することで、PGF2αの全合成をわずか4段階で行うことが可能になる。また、得られたPGF2αが更に炭素骨格切断反応を受けることで、新たな薬理活性を示す有用物質探索が展開できると思われる。
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