研究課題/領域番号 |
18H01984
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
千田 憲孝 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (50197612)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | タキソール合成 / ネオツベロステニン / サマリウム環化 |
研究実績の概要 |
本研究では,複雑な多環性構造を有する天然物を効率的に合成する手法の確立を目的とし,これを達成するために,以下の二つのテーマについて研究を行なっている。1)タキソールの第二世代合成: 3-メトキシトルエンより合成したC環部と,シクロヘキサン1,3-ジオンより調製したA環部のカップリング反応で得られるアリルベンゾエート/アルデヒドのヨウ化サマリウムを用いた環化反応により,6/8/6系三環性化合物を効率的に合成する手法を確立した。本環化化合物を用いて,タキソール合成の重要前駆体であるバッカチンIIIの合成に重要と思われる化合物の合成経路を開発することに成功した。しかしながらサマリウム環化の基質であるアリルベンゾエート合成の際のアリル酸化反応において、実験の再現性に問題が生じた。このため、合成を先に進める前に実験条件の再検討を詳細に行った。 2)ネオツベロステニンの全合成: D-アラビノースから合成したアリル1,4-ジオールの7員環環状オルトエステルを経由するClaisen転位反応により,立体選択的に 二連続不斉炭素を構築できることを見出した。得られるアリル1,2-ジオールのワンポットOverman/Claisen転位は高立体選択的、高収率で進行した。ワンポット転位体の官能基変換によるネオツベロステニンのγ-ラクタム部位の合成法を確立した。このγ-ラクタムはネオツベロステニン合成における有用な合成中間体である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)タキソールの第二世代合成: 3-メトキシトルエンより合成したC環部と,シクロヘキサン1,3-ジオンより調製したA環部のカップリング反応で得られるアリルベンゾエート/アルデヒドのヨウ化サマリウムを用いた環化反応により,三環性化合物を効率的に合成する手法を確立した。本化合物を用いて,タキソール合成の重要前駆体であるバッカチンIII合成における重要中間体の合成を達成することができた。しかしながら環化基質であるアリルベンゾエート合成の際のアリル酸化反応において、実験の再現性に問題が生じたため、実験条件の再検討を行った。このため実験計画において、約4ヶ月の遅れが生じた。 2)ネオツベロステニンの全合成: D-アラビノースから合成したアリル1,4-ジオールの7員環環状オルトエステルを経由するClaisen転位反応により,立体選択的に 二連続不斉炭素を構築できることを見出した。得られるアリル1,2-ジオールのワンポットOverman/Claisen転位によりネオツベロステニンのγ-ラクタム部位の合成法を確立した。このテーマについてはおおむね順調に進行した。これらの研究成果より、本研究の進捗状況は、計画よりもやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
タキソール第二世代合成においては,昨年度までに見出した合成ルートの最適化を行うことによりバッカチンIIIを大量合成し,保護基の選択的除去,側鎖を導入 するなどしてタキソールの全合成を完成させる予定である。 ネオツベロステニンの全合成研究においては,α,β-不飽和エステル/アルデヒド体のヨウ化サマリウム環化による四環性化合物(オキソネオステニン)の合成の収 率向上を目指す。また合成ル ート全体の最適化を行い,オキソネオステニンの大量合成する。これにイリジウム触媒を用いたラクタム選択的な求核付加反応を用 いてγ-ラクト ン部を導入し,ネオツベロステニンの全合成を完成させる予定である。
|