研究実績の概要 |
我々は1,10-フェナントロリン型配位子をもつパラジウム触媒を用いたチェーンウォーキングを経る環化反応を開発してきており、前年度までにはジボロンを反応剤として使用することで、内部アルケンと末端アルケンを併せもつ1,n-ジエン類の遠隔位ジボリル化・環化反応が進行することを見出した。そこで、この知見を活かすことで、本研究初期に検討していた1,n-ジエン類のジボリル化・環化反応について再度検討した。まず、1,6-ジエン類を基質として用いることでヒドロホウ素化・環化反応を開発した。本反応はチェーンウォーキングを経ないで進行するものであるが、1,6-ジエン類とヒドロボランを用いた五員環形成を伴うヒドロホウ素化・環化反応という新しいタイプの反応である。本反応の基質にはマロン酸エステル部位のみならずリンカー部位に様々な官能基を導入でき、またジエンとしても末端アルケンのみをもつものに加えて、末端アルケンと内部アルケンを併せもつ基質が利用が可能であった。また、リンカー部位により長いメチレン鎖をもつ1,n-ジエン類を用いた遠隔ヒドロホウ素化・環化反応についても再度検討を行った。その結果、単離収率は低いものの目的とした五員環形成を伴うた遠隔ヒドロホウ素化・環化反応の進行が確認できた。さらにジアリルアミンを出発原料としたヒドロホウ素化・環化反応により得られるピロリジン誘導体上のボリル基の更なる変換についても検討した。トリフルオロホウ酸塩を経由する鈴木・宮浦カップリングではアリール基が導入でき、また酸化反応によるヒドロキシ基への変換も可能であった。また、前述の遠隔位ジボリル化・環化反応について中程度の単離収率に留まっていた基質について、再検討を試みたところ精製法の改良により収率が改善した。
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