研究実績の概要 |
昨年度までには、芳香族架橋ジホスフィン配位子で保護されたAu6クラスターにおける「金属コア部分」と「芳香族部位」との間に働く非共有結合性の引力的相互作用に関する研究を行ってきた。その過程で、2,6-ピリジル架橋ジホスフィンを配位子に用いた場合に1,3-フェニレン架橋配位子を用いた場合と著しく異なる挙動を示すことが明らかとなってきた。本年度は昨年度中に予備的に見いだされた、2,6-ピリジル架橋ジホスフィンで保護されたAu6クラスターと銅化合物の反応によるAu-Cu合金型クラスターの生成に関して、吸収スペクトルによるモニタリングを行い、溶媒、当量比、単離手法等の反応条件の最適化を行い、合金型クラスターを高収量で取得するルートを確立した。質量スペクトルからAu6クラスターに対して2つの銅原子とカルボキシレートが付加した合金型クラスターが生成していることが示唆された。加えて、X線結晶解析に適した単結晶の作成に成功し、反応前のAu6クラスターの骨格構造にひずみが生じそこに銅の二核カルボキシレート錯体がキャップされた興味深い構造をとっていることが明らかとなった。架橋部ピリジルユニットのN原子は銅に配位しており、本合金クラスターの形成に決定的な役割をしているものと思われる。実際、1,3-フェニレン架橋配位子、あるいはN原子の位置が異なる異性体である3,5-ピリジル架橋ジホスフィンを用いた場合には合金型クラスターの形成は全く認められなかった。
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