研究課題/領域番号 |
18H01989
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
二瓶 雅之 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00359572)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金属酸化物 / ナノ粒子 / 有機ケージ分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、金属酸化物粒子の性質を左右する主要パラメータ(サイズ、形状、表面・コア電子状態)の自在制御を可能とする超精密合成法を開発し、未知の超微小金属酸化物を創出するとともに、構造・機能の相関解明に基づく革新的機能の開拓を目的とする。 本年度は、両親媒性有機ナノケージをもちいた汎用性の高い金属酸化物ナノ粒子合成法の開発を行った。前年度の研究で、酸化鉄粒子形成反応の初期中間体としてFe8@有機ナノケージ分子が選択的に生成することを見出している。そこで、様々な金属イオンを用いて検討を行ったところ、配位数や酸化状態など、金属イオンの性質の違いを反映した様々な初期中間体が形成することを見出した。ここで、化学量論などを最適化することで、ケージナノ空間内に3つ以上の金属イオンを含む物質を選択的に合成できることを見出し、これらが様々な酸化物粒子合成に対する汎用性の高い前駆体となり得ることが示唆された。 一方、超微小粒子の表面修飾と配列制御を目的とし、先ずよりシンプルな実験系としてケージ内包金ナノ粒子の合成と配列制御について検討を行った。その結果、ケージ分子の酸化還元を伴う金ナノ粒子合成法を確立した。さらに、ケージ包接金ナノ粒子がケージ構造の間隙に基づく高い表面露出率を持つとともに、高い事後修飾性をもつことが分かった。また、各種測定から、得られたケージ内包金ナノ粒子が異方的粒子間相互作用を示すことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、1)超微小金属酸化物粒子の合成法の確立、2)様々な有機ナノケージ分子の開発による酸化物のサイズ・形状制御、3)超微小金属酸化物の機能開拓の三点を柱にしている。本年度は、1)については様々な金属酸化物ナノ粒子の合成を可能とする反応前駆体の合成法を確立した。また、3)については、有機ケージ分子に内包されたナノ粒子が高い表面修飾性をもつとともに、異方的粒子間相互作用を示すことを示唆する結果を得た。これらは今後の研究展開の基盤となるものであり、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、前年度に確立した反応初期中間体を前駆体として用いることで、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化コバルトなど、様々な金属酸化物粒子の合成を行う。また、段階的な反応を行うことでヘテロメタル金属酸化物粒子の合成も検討する。さらに、それらの化学的、物理的性質を詳細に明らかにし、分子と粒子の境界領域に潜在する特性の探索を行う。一方、これまでにある程度確立した有機ナノケージ分子合成法を活用することで、金属酸化物粒子の サイズ・形状の制御を行い、物性と構造の相関を詳細に検討する。さらに、上記の結果を有機的に組み合わせることで、金属酸化物ナノ粒子の組成、形状、表面、集積化の制御を駆使した機能性材料合成へと展開する。
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