研究課題
本研究の目的は、生体内のタンパク質ナノポケットが持つ魅力的な空間機能に発想を得て、フラスコ内で特異な空間機能を創出するため、“芳香環ナノポケット”を活用した生体活性分子の選択的な識別とその機能変換を達成することである。その戦略として、芳香環のみで囲まれた1ナノサイズの空間を有する水溶性の分子カプセルおよびチューブを利用する。研究の第1目標として、申請者が開発したこれらの芳香環ナノポケットを用い、水中で様々な生体関連分子の選択的な識別を達成する。第2目標では、ナノポケット内に取り込まれた生体分子の構造と物性を解明し、機能の変換を目指す。さらに第3目標では、酵素反応を模倣して、芳香環ナノポケットを反応場とした水中・室温での高活性な触媒機能を開拓する。これらを通じて、医療や材料分野での最先端分子技術となる独創的な人工空間機能を創出する。本年度は、柔軟で相互作用の弱いアルキル鎖を持ち、その骨格中の不飽和部位の数の違いで、全く異なる性質を示す脂肪酸をターゲットにした。この生体活性分子に対して、配位結合性カプセルが提供する“芳香環ナノポケット”を活用して、水中で内包挙動を解明した。その結果、不飽和数の異なる脂肪酸の混合物から、特定の脂肪酸を選択的に識別することに成功した。また、ポリ不飽和のDHAやEPAを内包することで、それらが酸素や光に対して顕著に安定化することを見出した。さらに、女性ステロイドホルモンを選択的に捕捉する芳香環ナノポケットの合成に成功した。酵素反応を模倣して、π-スタッキング型カプセルが提供する芳香環ナノポケットを反応場とした水中・室温での高活性な光触媒反応も開発した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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