研究課題/領域番号 |
18H01991
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
河野 正規 東京工業大学, 理学院, 教授 (30247217)
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研究分担者 |
大津 博義 東京工業大学, 理学院, 助教 (10547087)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 配位高分子 / 協奏的反応空間 / X線構造解析 / オレフィンの分離 |
研究実績の概要 |
アルカン類と銅(I)イオンと親和性の高いオレフィン類の競争的包接挙動を検討したところ,配位不飽和サイトを有するネットワーク錯体は150%もの高いオレフィン選択性を示すことが分かったのでそのメカニズムを解明するために赤外吸収振動分光法によりゲストの包接前後でのスペクトル変化を観察した.高い選択性が観察されたオレフィン類は炭素炭素二重結合に相当する振動バンドが変化し,そのシフト幅から化学吸着種と物理吸着種が存在することを明らかにした.ネットワーク錯体の細孔の大きさを考慮すると両化学種が存在することは妥当であり、水共存下ではアルカンとアルケンの選択制が見られなくなったことから,当初の狙い通り配位不飽和サイトの存在がアルケン類への高い選択性を示す鍵となっていることが示唆された.また,第一原理計算を用いてそれぞれのゲストが包接されたネットワーク錯体の安定化エネルギーを計算したところアルケン類が配位不飽和の銅イオンに化学吸着されることにより安定化されることが支持された.また,H31年度ではゲストの選択制を正確に測定するための方法を確立した.本研究に関連する成果をACCC7・錯体化学討論会・日本結晶学会・日本化学会春季年会で報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,申請者が最近見出したTd対称性を有する四座配位子とキュバン型ヨウ化銅錯体を用いる細孔性ネットワーク錯体の構築法を基盤として,まず,四座配位子の四つの配位部位の一つを反応性官能基に置き換えた三座配位子を各種合成し,これと四座配位子との混合物を用いて金属錯体との自己集合を多角的に検討し,官能基を含む細孔性ネットワーク錯体を速度論的に合成する一般的手法を確立することを目的としている.今回フェノール基を導入した三座配位子を用いて,本コンセプトを実証することができた.新たな三座配位子の合成が想定より時間がかかっているが,精製法を検討する段階まで至っている.これまで合成に成功してきた三座配位子を含むネットワーク錯体を用いて,アルカン・オレフィンなどの選択的ゲスト包接挙動を精査したところ,配位不飽和サイトの存在が重要であることをNMR・振動分光・第一原理計算などを用いて確認できたことから,本研究の戦略が正しいことは実証できており,ほぼ当初の計画通り進展しているといえる
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今後の研究の推進方策 |
H31年度ではゲストの選択制を正確に測定するための方法を確立したので,令和2年度では様々なアルカンとアルケンの混合物を用いて選択制を検討するとともに新たなC3対称配位子の合成を完結し,配位不飽和サイトを有する新たなネットワーク錯体を速度論的に合成する.そして,単結晶X線構造解析により構造を解明し,基質の温度や比率などの条件を変えることによりより高い選択性が可能か検討し,協奏的に基質を捕捉することによりより選択的な分子篩効果や特異な酸化反応などを検討する.現在コロナウイルスの影響で放射光施設が使えない状況であるが,その選択性の起源をその場観察法を適用したX線構造解析により解明する予定である.
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