アルカン類と配位不飽和サイトを有する銅(I)イオンと親和性の高いオレフィン類の競争的包接挙動を検討したところ,配位不飽和サイトを有するネットワーク錯体は1.5倍もの高いオレフィン選択性を示すことが分かった.当初の狙い通り配位不飽和サイトの存在がアルケン類への高い選択性を示す鍵となっていることが示唆された.この結果を受けてピリジンの配位部位を4位から3位のピリジンの配位子を新たに合成し,銅(I)イオンとネットワーク錯体の合成したところ配位不飽和サイトが存在しない4配位のコネクターを有する細孔性ネットワーク錯体の合成に成功した.そこでモデル実験としてヨウ素の吸着実験を行ったところ4段階の特異な吸着挙動を示した.特筆すべき結果として,相互作用部位であるネットワークの骨格の一部である架橋ヨウ素に化学吸着するだけでなく,銅イオンにヨウ素が配位することにより5配位に変化したことである.そこで,このネットワークには銅イオン周りが柔軟な構造を有していることに着目して,それをオレフィン類の分離に適用したところ,前処理の方法により結果が異なるが,2‐5倍程度の選択性を示すことを見出した.現在そのメカニズムを検討中である.本研究に関連する成果の一部を錯体化学討論会・日本結晶学会・日本化学会春季年会で報告した.
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