研究課題/領域番号 |
18H01992
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
川口 博之 東京工業大学, 理学院, 教授 (20262850)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 遷移金属 / アルカリ金属 / フェノキシド配位子 / 錯体化学 |
研究実績の概要 |
アルカリ金属と遷移金属を併せもつ多核金属錯体の合成および機能化に関して研究を行い、以下の成果が得られた。 (1) アルカリ金属と遷移金属を併せもつ多核金属錯体の構築単位となる遷移金属フラグメントの合成に取り組んだ。本研究課題では、アリールオキシド基を組み込んだ多座配位子をもつ遷移金属に着目した。多座配位子のキレート効果により、構築単位としての金属錯体を安定化できる。さらに、アリールオキシド基の酸素部位およびベンゼン環部位との相互作用を介して、アルカリ金属イオンを遷移金属フラグメントに取り込むことが可能である。これにより、アルカリ金属と遷移金属が近傍に集積した多核骨格を構築できると期待される。3つのアリールオキシド基ArOHを1つのメチン炭素で連結した(HOAr)3CHとTiCl4を1:1の割合で反応させたのち、1当量のベンジルカリウムを作用させると、シクロメタル化が進行し、チタンのアトラン型錯体が得られた。 このチタン錯体へのアルカリ金属の導入を目的に、様々なアルカリ金属試薬との反応を検討した。その結果、カリウムナフタレニドとの反応において、カリウムとチタンを1:2の割合で併せもつナフタレン錯体を得た。カリウムは[C(ArO)3]配位子の酸素部位およびベンゼン環部位との相互作用を介して、錯体内に取り込まれた接触型イオン対を形成している。このTi-K錯体の溶液を窒素雰囲気下に置くと、ナフタレン配位子のN2分子による置換が進行し、N2分子がend-on型で2つのチタンを架橋した錯体が得られた。 (2)(1)で得られたTi-K-N2錯体ではカリウムカチオンがN2分子とside-on型で相互作用している。この錯体にCO2を反応させると、Ti-N結合へのCO2の挿入が観測された。これにより、Ti-K 錯体を反応場として用いることにより、N2分子とCO2分子のカップリング反応を達成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遷移金属とアルカリ金属を併せもつ金属錯体を合成し、性質の異なる金属が協奏的に作用することで特異な反応性を示すことを明らかにした。遷移金属/アルカリ金属多核錯体の機能を検討し、発展できる状況にある。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を進展させる。構築単位となる遷移金属フラグメントの開発を進めるとともに、アルカリ金属の導入法を検討する。主な手法そしては、水素化アルカリ金属や有機アルカリ金属化合物との反応を行う。また、反応性の立体・電子的制御を目的に、遷移金属フラグメントの配位子の置換基を変更し、構造や電子状態に及ぼす効果を検討する。
|