アルカリ金属と遷移金属を併せ持つ多核金属錯体の合成および機能化について研究を行った。3つのフェノキシド基を橋頭位の炭素で連結した四座配位子をもつアトラン型チタン錯体を還元することで得られるTi-K錯体を還元剤として用い、有機アジド、白リン(P4)、二酸化炭素との反応を検討し、以下の結果を得た。 Ti-K錯体に有機アジドを作用させると、窒素ガスの発生を伴いながら反応が進行し、相当するイミド錯体が得られた。Ti-N結合の強い極性を反映し、イミド配位子のTi-N結合には対イオンであるカリウムが相互作用し、接触型イオン対を形成している。このイミド配位子は求核性が高い。例えば、アジドとしてシリルアジドMe3SiN3を用いた場合、反応過程でシリル基の転移が起こり、ビス(トリメチルシリル)イミド配位子が結合したTi-K錯体が得られた。 つぎに、P4との反応を行った。反応は円滑に進行し、環状P3配位子が架橋した二核チタン錯体が得られた。環状P3配位子が2つのチタン錯体フラグメントに対称的に挟まれる形で結合した逆サンドイッチ型構造をもつことをX線構造解析により明らかにした。対イオであるカリウムはP3配位子と相互作用し、接触型イオン対を形成している。 二酸化炭素との反応では、CO2のC-O結合切断により、オキソ錯体とCOが最初に生成する。続いて、オキソ錯体がCO2と反応することで、カルボネート錯体を与えることが観測された。 以上、Ti-K錯体の二官能性を用いることにより、特異な分子変換が進行することを明らかにした。
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