研究課題/領域番号 |
18H01994
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
梅林 泰宏 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90311836)
|
研究分担者 |
亀田 恭男 山形大学, 理学部, 教授 (60202024)
松岡 史郎 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10219404)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 溶媒和イオン液体 / 超濃厚電解質溶液 / イオンホッピング |
研究実績の概要 |
ZnSe結晶10回反射ATRを用いた自動ATR-FT-IRを超濃厚電解質溶液に適用した。屈折率により光路長補正された希薄から超濃厚のLiTFSA濃度領域の一連のIRスペクトルを相補的最小自乗解析およびMCR-ALS解析を行った。実測IRスペクトルは遊離およびLi+に配位した溶媒の2つの化学種で説明でき、得られた生成分布関数は、Raman分光で得られたそれとほぼ完全に一致した。さらに、滴定法による屈折率の自動測定化を行った。また、Li―OおよびLi―H部分構造因子(動径分布関数)を実験的に決定するため、軽水素試料による中性子全散乱実験を行ない、H/D および 6/7Li 二重同位体置換法を適用した。さらに、種々のリチウム塩スルホラン溶液について6/7Li 同位体置換中性子全散乱実験およびMDシミュレーションを行なった。MDシミュレーションは、実験で得られたLiに関する部分構造因子(動径分布関数)を再現した。 種々のエチレンオキシド鎖長のグライムからなる溶媒和イオン液体の誘電緩和スペクトルを測定、解析した。ニートグライムでは、3つの緩和過程で説明できるが、溶媒和イオン液体では、従来希薄電解質溶液では見られない非常に低い周波数領域にも緩和が観測された。この緩和時間は、イオン伝導率および粘性率と良好な直線関係を示し、異常に遅い緩和過程が、溶媒和イオン液体のイオン伝導および粘性緩和を支配することが定量的に示された。一方、超濃厚電解質水溶液について同じ周波数領域で測定したところ、溶媒和イオン液体で観測された異常に遅い緩和は観測されず、溶媒和イオン液体で観測され異常に遅い緩和が溶媒和イオン液体に特異的な緩和であることを示唆する。 尚、新規溶媒和イオン液体や超濃厚電解質溶液のうち異常な熱物性を示す資料について、新規導入したDSCにより測定、解析し、液体温度範囲を特定することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自動連続滴定屈折率即例システムと同ATR-IR測定システムを開発、確立し、Ram,an分光の結果とほぼ一致する結果を得ることに成功し、今後、相補的なRaman/IRの両面から電解質溶液のスペシエーション分析が可能となった。 加えて、誘電緩和スペクトルの測定、解析のルーティーン化にわが国で始めて成功し、今後、電解質溶液に関する集団的ダイナミクスに関する知見が容易に得られる見込みである。また、これにより比較的長いエチレンオキシド鎖のグライム系溶媒和イオン液体のリチウムイオン伝導が、従来の単座配位溶媒とは全く異なり、溶媒交換/陰イオンは配位子交換がリチウムイオン伝導および粘性率のいずれにも大きく寄与することを見出した。これは、溶媒活量が密接に関係しており、溶媒和イオン液体の学術的定義に加え、リチウムイオン伝導における溶媒活量の重要性を指摘することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
スルホラン系長濃厚リチウム塩溶液では、バルク溶液中の高いリチウムイオン伝導が知られており、リチウムホッピング機構が考えられている。一方、モデル電池系の限界電流測定によれば、電極/電解液界面では、バルクリチウムイオン伝導度から予想されるよりはるかに大きなリチウムイオン伝導が示唆された。これは界面に特異的ないいオン伝導を示唆する。このような界面特異的なイオン伝導の機構を明らかにするには、電池を実際に駆動しながら同時に種々の測定を行うオペランド測定が有用であり、オペランドけんっびRaman測定とオペランドインピーダンス測定に着手する。
|