研究課題/領域番号 |
18H01996
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
酒井 健 九州大学, 理学研究院, 教授 (30235105)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子性触媒 / 水素生成反応 / 白金錯体 / 超分子 / 人工光合成 |
研究実績の概要 |
本課題では、水分解反応や他の酸化/還元触媒過程を駆動する分子性錯体触媒を用いた超分子触媒系の構築を目的としている。まず、優れた水素生成触媒として知られる白金錯体を包摂する種々の籠状錯体の合成及び測定を行った。ゲストとなる白金錯体としては、白金ビピリジン錯体を基本骨格としてメチル基やカルボキシル基等を導入した4種類を選択した。一方、ホストとなる籠状錯体としては、過去に白金錯体の包摂挙動が観測されている正六面体型錯体の他、Univ. Cambridge Nitschke研究室が高い包摂能を有すると報告した正四面体型錯体を5種類、計6種類を選択した。包摂挙動の測定は規定量の籠状錯体に対して、ゲストとなる白金錯体を加えていく滴定実験と実験時の溶媒、温度や空気中及び窒素雰囲気下等の包摂条件の検討を行った。今回選択したホスト・ゲストの組み合わせでは、NMR上で包摂体の形成が明確に判別できる結果は得られなかったものの、包摂体の形成を示すゲストピークのブロードニングやゲストのみのピークからのシフトは観測された。 他方、超分子触媒系に応用可能な高活性酸素発生触媒の開発にも取り組んだ。具体的には、反応を触媒反応の高速化及び、低過電圧化を目指し、植物の光合成系の電子伝達を促進することで知られるチロシン残基を導入した新規ルテニウム錯体触媒の設計、合成、及び機能評価を行った。本錯体のアセトニトリル溶液に少量の水を添加し電気化学測定を行ったところ、酸素発生に由来する触媒電流値の増大が観測された。pH = 9において、1.4 V vs. SCEの電位で定電位電解を行い、生成する酸素ガスをガスクロマトグラフで計測したところ、触媒回転数(TON)は10時間でTON=9300に到達すると同時に、100%のファラデー変換効率が確認され優れた酸素発生触媒機能を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超分子触媒系の開発については現状包摂体の形成を明確に判別できる結果は得られなかった。一方で、包摂体の形成を示唆するゲストピークのブロードニングやシフトといった予備的な実験データを得ることに成功した。また超分子触媒系に用いることが可能な高活性酸素発生触媒の開発にも成功した。このように本研究課題は研究計画に従いおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は超分子触媒系の構築に関する研究に加え、近年特に重要視される二酸化炭素還元反応を促進する分子性触媒の開発についても力を注ぐ。そして、高活性CO2還元触媒を包接した超分子カプセルの創製についても試みる。
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