研究課題
近年、穿刺吸引細胞診によって臨床的確定診断が行われる症例が増加しており、ガンの新しい確定診断法としての細胞診が益々注目を集めている。しかしながら、従来の細胞診では染色工程が必須であるため、死細胞の染色像という細胞の「スナップショット」による画像診断しか行えない。これに対して、患者から採取したばかりの細胞は新鮮な生細胞であるため、細胞を特徴付ける分子情報が全て揃っている。そこで本研究では、非線形光学過程、特に非線形ラマン散乱の一種であるコヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(coherent anti-Stokes Raman scattering; CARS)を基盤技術として用い、オルガネラを高い空間分解能でそのままライブで可視化する”動画診断”を可能とする、まったく新しい細胞診の開発を目的として研究を行った。研究期間内に、新規細胞診を実現するための顕微イメージング装置の開発を行った。近赤外域のコヒーレントラマン信号を効率よく取得するための高感度・低雑音・高速電荷読み出しが可能な新規CCDディテクタを導入することで、世界最速の超広帯域マルチプレックスCARS分光顕微鏡を立ち上げることができた。また、生細胞の活性を保ったまま顕微イメージングを行えるよう、装置の拡張・開発を行った。ハードの改良に加え、重水素置換プローブを組み合わせることで、代謝物の選択的可視化とそのタイムラプス測定を実現した。特に褐色脂肪細胞を対象とした研究では、細胞内不飽和脂質を一定に保つ働き(不飽和脂質ホメオスタシス)を持つことが示された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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