バイポーラ電気化学デバイスによる多項目同時バイオセンシングの実現に向け、前年度までに銀/塩化銀や界面での電子の授受のないナトリウムイオン感応膜を電位制御に用いることにより、アノード、カソード両端での電極反応に影響を与えずに、電位制御が可能なことを示してきた。令和2年度は、同時バイオセンシングへの応用として、プローブDNAをバイポーラ電極のカソード側に固定し、検出対象DNAと2本鎖にした後、電極活性のあるインターカレータを用い、検出を試みた。しかし、電気化学発光強度が弱く、検出に問題があったため、酵素を用いたレドックスサイクリングにより増幅を行う方式で引き続き検討を続けている。 一方、令和元年度までに、閉じたバイポーラ系の応用として、作用極、参照極、対極の別々の区画に満たした溶液を金属で接続した3電極系が実現できることを示したが、Ru[(NH3)6]2+/3+でも正常なサイクリックボルタモグラムが得られることを確認した。また、アンペロメトリックセンサへの応用例として、西洋わさびペルオキシダーゼを含むオスミウムポリマー中にグルコースオキシダーゼを固定したグルコースセンサを作製し、直線的な検量線を得た。さらに、ポテンショメトリックセンサへの応用例として、検出用区画と参照極用区画が酸化イリジウム線で接続されたナトリウムイオン電極を作製し、Nernst的な応答が問題なく得られることを確認した。さらに、この金属接続は、マイクロフルイディクデバイスにおける自立的送液制御にも応用できることを示し、次世代マイクロフルイディクデバイスの基盤技術となりうる電気化学集積回路のアイデアへと導いた。マイクロ電気化学デバイスの一つの課題として、集積化が進んだ場合の溶液間の電気間の接続の問題があったが、この新技術は、この点において非常に有利である。
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