研究課題/領域番号 |
18H02002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉本 敬太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60392172)
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研究分担者 |
齋藤 伸吾 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60343018)
吉冨 徹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20585799)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | キャピラリー電気泳動 / 核酸アプタマー / DNA / RNA / 蛍光 / バイオセンサー |
研究実績の概要 |
申請者は前年度までに可溶性タンパク質であるトロンビンとTNF-a、さらに膜タンパク質であるVEGFRを標的として核酸アプタマー選抜に成功した。本年度は、主に獲得したアプタマーの機能評価と機能向上を目的とした研究を展開し、以下の4つの研究成果が得られた。 【1】VEGFRアプタマーの結合親和性と高次構造解析を行った。興味深いことに、獲得したアプタマーの Apt02 がVEGF-Aと同様な血管新生促進能をもつことが明らかとなった(Mol. Ther. Nucleic Acids, 19, 1145, 2020)。 【2】トロンビンアプタマーM08の二価化を検討し、連結するリンカー部位の核酸塩基種やリンカー長の最適化を行った結果、M08の抗凝固能を大きく上回る薬理活性をもつ二価アプタマーの構築に成功した。さらに、同二価アプタマーの薬理活性を中和する一本鎖DNA配列の設計を行い、M08配列の半分とリンカー部位の両方に相補鎖を形成する短鎖配列が最も高い中和効果を示すことが明らかとなった(Res. Prac. Thromb. Haemo, accepted)。 【3】獲得したTNF-aアプタマーの二価化を検討した。Apt14 の阻害機序の評価を行った後、最小塩基配列の同定を行なった。さらに、Apt14 を用いたホモ・ヘテロ二価化アプタマーを設計した後、TNF-q 阻害効果の確認をした結果、短鎖化を行わずに他のアプタマーと二価化を行うことで阻害効果の向上が確認された(論文投稿中)。 【4】MACE-SELEX実験系の改善を行った。粒子として、表面に官能基やタンパク質が修飾された市販のマイクロ粒子に加え、リポソーム上に膜タンパク質を発現させたプロテオリポソームの利用を検討した。Gタンパク質共役型受容体を発現しているプロテオリポソームを用いてMACE分離が可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、獲得済みのトロンビン、TNFa、VEGFR結合性アプタマーの機能評価と機能向上を試みた。成果は「研究実績の概要に」記載した通りであり、様々な有益な機能化アプタマーが得られ、2報の論文を報告することができたため。さらに、本成果は、申請者が確立したMACE-SELEX法で優れたアプタマーが獲得できることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
各標的分子実験系において MACE separation が達成されるためには、標的分子のマイクロ粒子表面への適切な固定化法の選択、さらに使用するマイクロ粒子表面の化学的特性の理解が肝要となる。非結合性の核酸を極限まで排除し、核酸アプタマー/粒子複合体を初回ラウンドから高感度に検出・分取するためには、(1)利用する粒子と分子固定化法の組み合わせの最適化、(2) 適切な表面化学修飾による粒子の分散安定化、(3) 標的分子の固定化密度の最適化、(4) MACE で最大の分離効率を達成できる電気泳動条件の最適化、などを調査・検討する必要がある。 これまでに行ったMACE-SELEXは全てカルボキシ基が表面に存在する粒子を用いて行ってきた。これをNi-NTAやProteinAなどが固定化された粒子に変更し、分離・分取実験系の最適化を行い、MACE-SELEXの適用範囲の拡大を試みる予定である。
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