研究課題/領域番号 |
18H02008
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
チッテリオ ダニエル 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00458952)
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研究分担者 |
蛭田 勇樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (60710944)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗体医薬品 / POCT / 糸基板センサー / 生物発光 / マイクロ流体 |
研究実績の概要 |
病院の診療室やベッドサイド、さらには在宅で行う検査、すなわちPoint of Careで、1滴の血液から血中抗体医薬品濃度のモニタリングができる安価、簡便、使い捨ての糸基板マイクロ流体分析デバイス(microfluidic thread-based analytical devices; μTADs)を開発した。抗体の特異的な認識、抗体濃度に応じたレシオメトリック(青から緑色)なシグナルの変化、生物発光によるシグナルの発生という機能が集約されているbioluminescent antibody sensing proteins (LUMABS)をμTADsに応用した。一つのデバイス内に6つの糸を組み込むことで、6つのターゲットを同時に分析することを可能とし、研究成果をアメリカ化学会のACS Sensorsに投稿した。続いて、抗体医薬品である抗がん剤セツキシマブの治療薬物モニタリング(TDM)を可能にする μTADs を開発した。デバイス中の糸は、血球分離試薬であるNaClが配置された2本の糸に、それぞれLUMABS・基質フリマジンを滴下した後、巻き合わせたシンプルなデバイス設計である。滴下された全血は毛細管力により自発的に糸中を浸透し、その過程でNaClにより血漿のみが分離される。最終的に糸末端において、血漿中のセツキシマブとLUMABS、フリマジンが混合され、セツキシマブ量に応じた緑色から青色への発光色変化が確認された。応答濃度域に関しても、患者の治療に用いる血中濃度で大きな変化を示すため、血液サンプルの前処理なしに、簡便に分析できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
μTADsのデバイス設計を完成させることができ、研究成果をアメリカ化学会のACS Sensorsに投稿することができた。また、セツキシマブの濃度応答はすでに得られており、最終年度にデバイスの基礎特性、スマートフォンでの分析評価を行うことで、さらに研究成果を論文発表できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Point of Careでの分析のために、スマートフォンでデバイスの生物発光シグナルを撮影することでの定量分析法について検討する。スマートフォン用のマクロレンズをセッティングし、撮影することで、これまで用いていた一眼レフカメラと同様に定量データを得られるか評価する。スマートフォンでの生物発光分析には、外部からの光を遮る専用のケースが必要である。本研究では、3Dプリンタを用いて、この専用ケースを作製する。専用ケースの構造について検討を行い、外部からの光を遮り、生物発光を高感度にスマートフォンのカメラで検出できるようにする。また、これまで用いていたLUMABSに変えて、ターゲット抗体濃度に応じて赤色から青色に変化するLUMABSを用いることで、より高感度な分析を達成する。これまでよりも生物発光色が大きく変化するため、より高感度な分析が期待できる。最終年度であるため、国際学会、国際的な学術誌での発表を行う。
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