研究課題
クリーンな水素生成技術として、太陽光の主成分である400 nm以上の可視光を吸収して、水を効率良く分解する光触媒反応系の構築が望まれている。光触媒高活性化に関するアプローチの一つとして、ヘテロ接合の形成がある。しかし、ヘテロ接合の構築がその界面でのみ作用するため、電子-正孔対の分離の促進は限定的である。そこで本研究では、炭素と窒素のみで構成されているグラファイト状窒化炭素光触媒のトリアジン環平面内に、直接異種構造を導入する分子内修飾法を確立することを目的としている。さらに非金属ドーピングという構造修飾と組み合わせることにより、新たな可視光応答活性の発現をねらい、水素生成に対する実用レベルの光触媒の構築を目指している。本年度は、グラファイト状窒化炭素にベンゼン環を分子内修飾する方法を模索した。ドーピングユニットにはフェノールを含め7種を検討した。合成した光触媒について構造解析を行い、その特徴を明らかにすることができた。XRDにより、分子内修飾よって窒化炭素の基本骨格が保たれているかを確認した。SEM、TEMにより、触媒の形態を観察、同時にEDXにてC/N比を確認した。FTIRにより、ベンゼン環が窒化炭素分子内に導入されているかを確認した。拡散反射紫外‐可視分光光度計により、バンドギャップの推定を行った。XPS測定により、CやNの化学状態を確認した。分光蛍光光度計、蛍光寿命測定により、電子-正孔対の効率的な分離促進を確認できた。以上のことから、グラファイト状窒化炭素にベンゼン環を分子内修飾する方法を確立することができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、グラファイト状窒化炭素にベンゼン環を分子内修飾する方法を確立することができた。また、合成した7種の光触媒の一部は、すでに光触媒的水素生成へと応用しており、一定の活性促進が確認できている。このことは、当初の予定通りであり、概ね順調に進展していると判断した。
次年度は、合成した光触媒を用いて水素生成活性評価と量子収率測定を行い、最適なドーピングユニットを決定する。また、最適化された分子内修飾グラファイト窒化炭素の光触媒活性の更なる向上を目指し、非金属元素ドーピングを行う。検討する非金属は、ホウ素、酸素、リンを予定している。新たに合成した光触媒について構造解析を行い、その特徴を明らかにする。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 10件)
Environmental Engineering Science
巻: 35 ページ: 401~407
10.1089/ees.2017.0138
Chinese Journal of Chemical Engineering
巻: 26 ページ: 529~533
10.1016/j.cjche.2017.05.019
Energy Sources, Part A: Recovery, Utilization, and Environmental Effects
巻: 40 ページ: 2432~2441
10.1080/15567036.2018.1502840
Clean Technologies
巻: 1 ページ: 141~153
https://doi.org/10.3390/cleantechnol1010010