研究課題/領域番号 |
18H02017
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
竹内 大介 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (90311662)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ブロック共重合 / パラジウム触媒 / ポリオレフィン / カチオン重合 / 配位重合 / ポリエチレングリコール / 二核錯体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、同一の触媒からエチレンやオレフィン類の配位重合とビニルエーテル類やN-ビニルカルバゾール、ラクトンなどのカチオン重合を行うことによる、新しいオレフィンブロック共重合体の合成法を開発し、高耐熱性ブロックや高透明性ブロックとプロトン伝導性ブロック・光電導性ブロックなどを組み合わせた共重合体を合成することである。今年度は二層型二核ジイミンパラジウム錯体を触媒に用い、エチレンやα-オレフィンとp-メトキシスチレンを反応させることで、両者のブロック共重合体が得られることを見出した。これは、通常のジイミンパラジウム錯体によるオレフィンと極性モノマーとの共重合ではランダム共重合体が得られることと対照的である。ブロック共重合体は、α-オレフィンのリビング重合を行った後にp-メトキシスチレンの重合を行うことによっても合成できることを見出した。本反応では、エチレン・α-オレフィンの配位重合が起こる一方で、カチオン性パラジウムによるp-メトキシスチレンのカチオン重合が起こっており、パラジウム上で還元的脱離が起こることで、両者のブロック共重合体が生成したと考えられる。単核パラジウム錯体を用いた場合には、ポリオレフィンとポリp-メトキシスチレンの単独重合体の混合物が得られるのみであった。しかし、単核パラジウム錯体によるα-オレフィンのリビング重合を行った後に一酸化炭素を作用させた上でp-メトキシスチレンの重合を行うことで、ブロック共重合体を得ることに成功した。 本研究ではさらに、単核パラジウム錯体によるα-オレフィンのリビング重合を行った後に一酸化炭素を作用させ、さらにポリエチレングリコールを反応させると、ポリオレフィンとポリエチレングリコールとのブロック共重合体が得られることを見出した。 二核パラジウム錯体をはじめ、空気に不安定な金属錯体の取り扱いのため、グローブボックスを購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、二層型二核パラジウム錯体を用いることでエチレンやオレフィンとカチオン重合性モノマーであるp-メトキシスチレンとのブロック共重合体の合成に成功した。反応機構の異なる複数モノマーの共重合体をワンポットで合成できることを見出した意義は非常に大きいと考える。さらに、単核パラジウム錯体を用いた場合にも、オレフィンのリビング重合を行った後に一酸化炭素を作用させた上でカチオン重合性モノマーを段階的に反応させることで、ブロック共重合体を合成できることを見出しており、用いることの可能な錯体の幅を広げることができた。現在のところブロック共重合体の生成効率が低い点が問題であり、様々な種類のカチオン重合性モノマーの検討と共に、今後の検討課題である。オレフィンとカチオン重合性モノマーを段階的に反応させる方法以外に、パラジウム錯体によるオレフィンの重合を行なった後に一酸化炭素を作用させた上でポリエチレングリコールを作用させることによって、従来合成例の少ない、ポリオレフィンーポリエチレングリコールブロック共重合体を合成することに成功したことは、当初の計画とは異なる新たな研究展開に繋がると期待できる。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
パラジウム触媒によるオレフィンの重合を行なった後に、一酸化炭素に加えてジフェニルエチレンなどの添加剤を加えることで、カチオン重合性モノマーの開始効率を向上させる。さらに、パラジウム上での還元的脱離を促進するために、π酸として作用する電子欠乏性オレフィンなどを加えることで、ブロック共重合体の生成効率の向上を目指す。 カチオン重合性モノマーとして、p-メトキシスチレンに加えて、ビニルエーテル類やN-ビニルカルバゾールについても検討を行い、さらに、配位重合性モノマーとしても、エチレンやヘキセンなどの汎用オレフィンに加えて、異性化重合を起こして液晶性や高耐熱性・高透明性高分子となるアルケニルシクロヘキサン、剛直ラセン高分子となるtert-ブチルエチレンなどについても検討を行い、多様なブロック共重合体の合成を目指す。 パラジウム錯体によるリビングポリオレフィンに対して様々な末端官能基性ポリマーを反応させることによっても、様々なブロック共重合体の合成を目指す。特に、機能性高分子としての応用を念頭におき、展開をはかる。
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