本研究では昨年度までに、二核ジイミンパラジウム錯体を触媒に用いてエチレンやα-オレフィンとp-メトキシスチレンを反応させることで、両者のブロック共重合体が得られることや、単核パラジウム錯体によるα-オレフィンのリビングポリマーに対して一酸化炭素を作用させ、さらにヒドロキシ基あるいはアミノ基を末端にもつポリマーを反応させることで、両者のブロック共重合体が得られることを見出している。さらに、同様にパラジウム錯体によるオレフィンのリビングポリマーに対してリビングラジカル重合開始部位を含むアミンを反応させ、それをマクロ開始剤として用いてスチレンのリビングラジカル重合を行うことで、対応するブロック共重合体を合成することに成功している。これらの知見をさらに拡張するため、今年度は、ノルボルネン類の重合を引き起こすパラジウム触媒の探索を行い、N-ヘテロサイクリックカルベン配位子を有するパラジウム触媒が、多様な官能基をもつノルボルネンの重合に有効であることを見出した。得られたポリマーの分子量は、仕込み比から期待される計算値より大きく、分子量分布も広く、リビング重合は達成できていない。今後、リビング重合可能な触媒についての検討が必要であると考えられる。昨年度はN-ヘテロサイクリックカルベン配位子を有する銀錯体がエチレンの重合に有効であり、実際の活性種は銀錯体上のカルベン配位子が助触媒であるアルミニウム上に移ったN-ヘテロサイクリックカルベンアルミニウム錯体である可能性や、カチオン性アルミニウム錯体と中性アルミニウム錯体との共同効果による成長反応機構の可能性を示唆する結果を得ている。今年度は実際にカルベン配位子がアルミニウム上に移動していることを証明した。また、エチレン重合に有効なホスフィン配位子とアルミニウムを組み合わせた触媒系を見出した。
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