研究課題/領域番号 |
18H02018
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高田 十志和 東京工業大学, 物質理工学院, 特任教授 (40179445)
|
研究分担者 |
打田 聖 東京工業大学, 物質理工学院, 講師 (70343168)
中薗 和子 東京工業大学, 物質理工学院, 特任助教 (30467021)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | トポロジー効果 / ロタキサン / ブロックポリマー / トポロジー変換 |
研究実績の概要 |
本研究では、複数の高分子鎖の連結点へのロタキサン構造の導入により高分子トポロジー変換が可能になる特性をさらに発展させ、外部環境や刺激によって生ずる「動的な連結点のミクロな分子応答」が最終的に「マクロな分子の自律的な集合(自己組織化)、バルク物性を制御」する動的秩序形成系を産み出す材料系の創製を目的として、ABCトリブロックコポリマー系における可逆的な線状―星形高分子トポロジー変換系を構築し、それを反映したモルフォロジー・バルク物性変換という階層的刺激応答系について研究を進めた。 本年度は、ミクロ相分離構造の明瞭な観察のために、各ポリマー成分が十分な分子量と適当なχパラメータを有するロタキサン連結型トリブロック共重合体の合成を行った。具体的な設計としては、ポリ(δ-バレロラクトン)(PVL)、ポリスチレン(PS)、ポリジメチルシロキサン(PDMS )からなるポリマーを合成した。PVLはジフェニルリン酸を触媒とするδ-バレロラクトンの開環重合を、ロタキサンの軸末端を重合開始点とすることで導入した。また、ロタキサンの輪成分上には、ジチオエステル構造を導入し、これをRAFT剤とするRAFT重合によりPSを導入した。最後に軸成分の末端に銅触媒を用いるアルキン-アジド環化付加反応によりPDMS鎖を導入して3種の高分子鎖がロタキサン構造で連結されたABCトリブロックコポリマーを合成した。これらの精製方法の確立と構造評価方法については、分子量数千程度のモデル分子を用いて確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたABCトリブロック共重合体の合成において、精製方法の確立が最も苦戦したが、検討を進めるうちにPVL-PDMS-PSの組み合わせにより、目的のトリブロック共重合体の合成と単離を達成した。当初はポリエチレングリコール鎖の導入についても検討を進めていたが単離精製が困難であった。しかしこれらも含めて、今後予定している高分子量体の合成と単離および構造評価に向けた基礎的な知見が得られたと考えている。ミクロ相分離構造の作成と観察は予定より遅れているものの、次年度中には達成できるものと考えている。これらを総合して概ね順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
PVL-PDMS-PSトリブロック共重合体について、今後は特に星型/線状トポロジー変換について検討を進める。まずはH-NMRおよびGPCによる溶液中でのトポロジーの評価を進め、これらのトポロジーを刺激によって可逆変換する検討も進める。さらに外部刺激に応答するロタキサンスイッチが薄膜状態でも制御可能なことをIR等による評価をもとに明らかにする。一方、ロタキサン連結トリブロックコポリマーのそれぞれのトポロジーについて、バルク状態でのミクロ相分離構造をSAXSおよびTEMによって観察し、トポロジー依存性を評価する。薄膜状態でのミクロ相分離構造もAFMにより観察し、薄膜状態でのロタキサンスイッチがミクロ相分離構造に及ぼす効果を検討する。ロタキサン連結の効果を明らかにするためのモデルブロックコポリマー等の合成も進め、これらの結果を総合して連結点の構造の違いが及ぼす高分子のミクロ相分離構造とその巨視的物性(力学特性など)の対応を明らかにするとともに、構造および物性を外部刺激により制御できる刺激応答性材料としての機能の探索を進め、論文等での成果公表を目指す。
|