本研究では、複数の高分子鎖の連結点へのロタキサン構造の導入により高分子トポロジー変換が可能になる特性をさらに発展させ、外部環境や刺激によって生ずる「動的な連結点のミクロな分子応答」が最終的に「マクロな分子の自律的な集合(自己組織化)、バルク物性を制御」する動的秩序形成系を産み出す材料系の創製を目的として、ABCトリブロックコポリマー系における可逆的な線状―星形高分子トポロジー変換系を構築し、それを反映したモルフォロジー・バルク物性変換という階層的刺激応答系について研究を進めた。 ミクロ相分離構造の明瞭な観察のために、各ポリマー成分が十分な分子量と適当なχパラメータを有するロタキサン連結型トリブロック共重合体の合成を行った。具体的な設計としては、ポリ(δ-バレロラクトン)(PVL)、ポリスチレン(PS)、ポリジメチルシロキサン(PDMS )からなるポリマーを合成した。PVLはジフェニルリン酸を触媒とするδ-バレロラクトンの開環重合を、ロタキサンの軸末端を重合開始点とすることで導入した。また、ロタキサンの輪成分上には、ジチオエステル構造を導入し、これをRAFT剤とするRAFT重合によりPSを導入した。最後に軸成分の末端に銅触媒を用いるアルキン-アジド環化付加反応によりPDMS鎖を導入して3種の高分子鎖がロタキサン構造で連結されたABCトリブロックコポリマーを合成した。本年度はこれらのトリブロック共重合体の熱物性等の基本的な物性評価および相分離構造の観察をもとに、ロタキサン構造に由来する特性について考察を進め、得られた成果を論文としてまとめた。
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