研究実績の概要 |
2019年度に報告したNature論文に記載していた研究データの不正疑義とグラフェンナノリボン合成の再現性が得られない問題に直面し、最終年度の研究計画を大きく見直すこととなった(現在も大学の調査委員会による調査が続いており、詳細を報告することができないため割愛)。しかし、別のモノマーによるグラフェンナノリボン合成、新しい反応条件によるAPEX重合反応を検討し、分子量が1万程度のグラフェンナノリボンを合成する手法を確立した。現在この手法によるグラフェンナノリボンについて、企業と共同で大量合成法の確立、構造、純度などの測定手法の確立を進めており、新しい炭素材料としてサンプル供給と市販化を検討している。また、APEX重合の素反応である多環芳香族炭化水素(PAH)の縮環π拡張反応(APEX反応)に関して、これまで我々が見出したK領域選択的APEX反応などに限られていたが、今回これまで変換困難だったのM領域選択的なAPEX反応の開発に成功した。この反応の開発によって、K, M, bay領域といったPAH上の様々な不活性領域の直接変換が可能となり、これまでにないグラフェナノリボン骨格を含む、各種縮環π拡張高分子(ラダーポリマー)の合成への一歩となった。
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