光機能性官能基としてBODIPYとカルバゾールをエステル部に有するジアゾ酢酸エステルの共重合を行い、側鎖として多数のカルバゾールと少数のBODIPYを有するポリ(置換メチレン)の合成に成功した。そのポリマー中のカルバゾールユニットを光励起すると、その励起エネルギーがBODIPYへと効率良く移動して、BODIPYからの蛍光発光が観測されることを確認した。 アミド結合を有する鎖長の異なるアルキル鎖をエステル置換基として有するジアゾ酢酸エステルを新たに合成し、その重合によりポリ(置換メチレン)を合成した。得られたポリマーは、側鎖中のアミド結合の分子内水素結合により、アミド基を持たない同程度の鎖長のアルキル鎖を有するポリマーと比較して、融点が大きく向上し、中には100度を超える場合もあることが判明した。アミド基を有する同じ側鎖を置換基とするビニルポリマーと比較すると、ポリ(置換メチレン)ではその側鎖の集積効果により、やはり融点が大幅に上昇することも確認した。新たな耐熱性高分子材料としての応用が期待できる結果である。 前年度までに、ジアゾ酢酸エステルの重合によりシンジオタクチックなポリマーを与えるナフトキノンとシクロオクタジエンを配位子とするPd錯体の開発に成功している。この錯体を開始剤として、光学活性なフェネチル基を置換基とするモノマーとナフチル基を有するモノマーの共重合を行ったところ、生成物のナフチル基のUV吸収に対応するCDスペクトルのピークに明確なコットン効果が観測されることを明らかにした。この結果は、シンジオタクチックなポリ(置換メチレン)が溶液中で安定ならせん構造を形成しており、キラルなフェネチル基の影響により、そのらせんの巻き方向に関してどちらか一方が優先的に生成していることを示している。ポリ(置換メチレン)のらせん選択的な重合に成功したことを示す重要な成果である。
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