研究課題/領域番号 |
18H02022
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
林 実 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (20272403)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ホスフィン / 高分子 / オリゴマー / 機能性材料 / ハイブリッド材料 |
研究実績の概要 |
本研究の中心課題は、構造の規定された有機ホスフィンオリゴマーを様々な有機・無機高分子で連結することによる新物質の創成である。 本年度は、昨年度合成を達成した長さや形状の異なる直鎖状のホスフィン含有オリゴマーを用いた新規ポリマー合成を行い、その合成を達成した他、そのポリマーによって得られる金属サブナノ粒子が連結形状によって異なる触媒活性を示すことを見出した。 また、各種有機・無機高分子によってホスフィン部位を連結したハイブリッド高分子合成についても本格的な検討を行い、昨年度までに合成を達成しているPEG、PS、シリコーン等で連結された2官能性の有機および無機高分子マクロモノマーを用いたクロスカップリング重合を達成し、それらのマクロモノマーを連結部分として有する新たなホスフィン含有ハイブリッド高分子の合成に成功した。このうちジホスフィンとPEG6000から得られるハイブリッド高分子は良好な水溶性を示し、ホスフィンスルフィド官能基を還元して得られる3価ホスフィン型ポリマーをパラジウム錯体化した高分子錯体も水溶性を示した。この水溶性高分子パラジウム錯体を触媒として各種パラジウム触媒反応に適用し、水中で充分な触媒活性を示すこと、及び反応後の分液操作で生成物を分離した後に、再沈殿によって容易に触媒が回収でき、少なくとも数回の触媒再利用がパラジウム金属の追加を行うことなく可能であることを確認した。 一方、得られたポリマーそのものの物性について検討した結果、一部の連結鎖とホスフィン部位、添加金属イオンの組み合わせにおいて得られるゲルに、ゴム弾性と自己修復作用が現れることを見出した。 これらの検討に加え、合成したホスフィン含有高分子のホスフィン官能基を変換するための新たな素反応開発を行い、リン原子上に各種ヘテロ原子を組み入れる新たな反応開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度当初の研究計画通り、昨年度までに合成を達成した直鎖状オリゴマー合成を用いた高分子合成と、各種有機・無機高分子によってホスフィン部位を連結したハイブリッド高分子合成を行い、新たに得られた各種ハイブリッドホスフィン高分子について触媒活性や物性の検討を進めることができた。これらの検討によって、ホスフィン高分子中のオリゴマー構造とサブナノ金属粒子の触媒活性の相関について明らかにした他、特にPEG連結ハイブリッド高分子については、水溶性高分子錯体触媒としての応用と回収再利用について明らかにし、さらに金属イオン架橋によって得られた物質のゴム弾性と自己修復特性の可能性を見出すことができた。 昨年春からのコロナ禍によって、約2ヶ月に渡る学生の研究活動停止措置、及びその後も継続した研究活動の時間制限により、本年度予定していた検討のうち一部が行えていないものの、新規官能基変換反応の開発が極めて順調に進展していることから、概ね計画通り順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最大の特徴は、構造の規定された有機ホスフィンオリゴマーを様々な有機・無機高分子で連結することによる新物質の創成であり、そのためには構造が規定され、かつ重合可能な官能性有機ホスフィンオリゴマーの合成が必須である。既に、申請者らの研究室で有するホスフィン合成ノウハウを駆使した昨年度までの検討により、直鎖状・環状のオリゴマー合成と、各種有機・無機高分子によってホスフィン部位を連結したハイブリッド高分子合成を確立でき、得られた物質の触媒利用や物性調査を始め、興味深い特性をいくつか見出している。 そこで今後は、本研究の特徴であるハイブリッド高分子を構成する各種「ホスフィンオリゴマー」部位と各種「有機・無機高分子マクロモノマー」構造の組み合わせによって、多様な構造を持つハイブリッド高分子の合成を進める。また、得られた各種精密構造制御されたホスフィン高分子やハイブリッド高分子について、その高分子を安定剤とする各種金属サブナノ粒子の合成と触媒活性調査、得られる錯体高分子ゲルの自己修復特性調査、各種物性の外的刺激による変化の調査、ポリマー中のリン官能基変換による極性官能基導入等を通して、新規なホスフィン含有ハイブリッド高分子の新たな機能性を見出し、新規な機能性ホスフィン高分子材料の創成に繋げる。
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